研究課題/領域番号 |
21K06452
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
吉村 智之 金沢大学, 薬学系, 准教授 (20432320)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 不斉合成 / アライン / キラルビアリール |
研究実績の概要 |
キラルビフェノール誘導体から発生させたアラインとフランを用いる付加環化反応により、キラリビアリール合成を検討した。中間体として想定している軸性不斉ビアラインもしくは軸性不斉アリールアラインの光学純度を保持するためには、低温での反応が必要である。そこで、低温でアライン発生可能な、アルキルリチウムやアルキルマグネシウムとのメタル-ハロゲン交換に続くトリフラート脱離によるアライン発生法を用いて反応を行った。その結果、THF 中ブチルリチウムを用いて -78 ℃ で反応を行うと、所望のビアリール化合物がジアステレオマー混合物として80%収率で得られた。生成物の光学純度は、原料の光学純度をほぼ保持していた。溶媒をジエチルエーテルに変更しても、同様な結果を与えた。次に溶媒を THF とし反応温度を 0 ℃ で行ったところ、収率が若干低下するものの、光学純度はほぼ保持された。驚くべき事に同様の結果が室温でも観察された。 (トリメチルシリル)メチルマグネシウムクロリドを用いて反応を行った。この試薬を用いた場合、-78 ℃ では反応は進行しなかった。しかし 0 ℃ 及び室温では反応が進行した。ジエチルエーテル溶媒の際にはブチルリチウムを用いた時と同様の結果となった。一方で溶媒を THF とすると、生成物の光学純度が向上するという興味深い現象が観察された。 最適条件を用いて、種々のヘテロビアリール類を合成した。低収率ではあるものの、ユニークな構造を持つヘテロビアリール類を高い光学純度で合成できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、キラルビアリール類を軸性不斉キラルビアラインまたは軸性不斉アリールアライン中間体を経由して合成することに成功した。得られたビアリール類の光学純度は、原料のものを保持していた。一方で収率が低く、その改善に条件検討を必要とした。計画では、網羅的に条件検討が必要であると考えたが、計画当初の反応が成功したこともあり、条件の絞り込みが効率的に行えた。まだ、収率に関して改善の余地があるので、しばらく条件検討を行うことを考えているが概ね当初の計画通りに研究は進捗している。
|
今後の研究の推進方策 |
本反応はキラルビアリール類を高い光学純度で合成出来るものの、収率は依然低いままである。そのため、更なる条件検討を行い収率の改善に努める。その上で、反応メカニズムの解明に向けて研究を展開する。特に、今回の実験で観察された光学純度の向上は非常に興味深い現象である事から、その詳細を明らかにしてゆく。機構解明のアプローチとしては、実験に加え計算化学も取り入れて効率的に進めてゆく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は順調に研究が進捗し、当初想定していた条件検討を行う必要がなくなった。そのため、試薬購入に対する支出が減り次年度使用額が生じた。今年度、メカニズム解明に着手するため、大量の反応試薬が必要になる。繰り越し分はその購入に充填する。
|