研究課題/領域番号 |
21K06453
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
秋葉 宏樹 京都大学, 薬学研究科, 助教 (70739945)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 抗体 / 低分子抗体 / クリックケミストリー |
研究実績の概要 |
本研究は、従来の抗体低分子化技術の欠点である、結合能と安定性の両立の難しさに対して、有機化学を利用した分子連結デザインを組み込むことによって、「投与時には安定なFab(低分子抗体)であり、標的上で強固な多価結合を示す分子に変換される」システムを構築することを目的としている。2021年度は、初期の2抗体を利用した分子連結デザイン最適化を進めることを計画した。2022年度にかけて、クリックケミストリーによる共有結合形成と共に蛍光団が形成される系によって、BpAb形成を蛍光により可視化することを目指した。 本年度の研究ではまず、HPLCによる分析に適した組換えTNFR2タンパク質取得系の最適化を行い、安定的に分析できる系を確立した。次いで、TNFR2タンパク質と抗TNFR2抗体を利用して取得したFabを利用した実験系で、反応性リンカーの構造最適化を進めた。その結果として、銅フリークリックケミストリーを利用する反応性官能基を用いることで、十分な反応性をもって、抗原存在下のみで蛍光強度の上昇が観察されることが明らかとなった。さらにはこの結果を利用して、2022年度に計画していた抗体エピトープ依存性を分析したところ、当初の設計通り、エピトープによって反応の有無が分かれることが明らかになった。これによって、本研究の目的である、抗原上で多価結合を示す分子の創製に必要な抗体設計情報を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2021年度の計画は反応性リンカーの構造最適化を目的としていたが、蛍光性リンカーを利用したデザインとしてはこれを達成し、さらには当初は次年度に計画されていたエピトープ依存性の分析まで手掛けることができた。また、分析系として利用するために、組換えTNFR2タンパク質の取得方法も最適化し、これを利用することで本研究をスムーズに進めることができた。当該研究目的以外の応用も含めて、研究の加速的進展に利した。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画通り、2022年度には細胞を利用した評価系の構築を進める。また、三官能性リンカーを利用した機能性部位の導入についても、前倒しで検討を開始する。反応性等の観点から改めての設計が必要であると考えられるため、エピトープ依存性について前倒して得られた時間を利用して、構造の精密最適化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
当年度に破損した器具の修理を依頼していたものの、年度内に納品が間に合わなかったため、翌年度の執行になってしまった。当該の金額は次年度使用額よりも大きく、次年度の助成金も一部使うことになるが、ごく小さい金額であり、翌年度の計画にはほとんど影響がない。
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