研究課題/領域番号 |
21K06456
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
安藤 眞 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 助教 (00622599)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 配位子 / 炭素 / 遷移金属触媒 |
研究実績の概要 |
本研究では申請者が独自に設計したビシクロ骨格を含有したNHOを合成し、これまでに開発例のない2-メチレンイミダゾリジン型配位子の開発と遷移金属触媒への応用を試みる。 初年度はまず、独自に設計したNHO配位子群の前駆体を合成する簡便な手法の確立を目指し検討を行った。以前開発した合成法を用いて合成したビシクロ骨格を備えたジアミンを、各種アンモニウム塩存在下オルト酢酸トリメチルと還流するとNHO前駆体である2-メチルイミダゾリニウム塩が得られることが分かったが、副生成物も多く得られ、収率が中程度に留まった。そこでジアミンに対しアセトアルデヒドを反応させて得た2-メチルイミダゾリジンを脱水素化する触媒的手法を独自に開発し、NHO前駆体を高収率で得る合成経路を確立した。得られた前駆体に塩基を作用させるとNHOが得られ、更に異なる条件を用いて各種パラジウム塩と反応させると[(NHO)PdCl2]2、cis-[(NHO)2PdCl2]、trans-[(NHO)2PdCl2]の三種の錯体が合成できた。これらのX線結晶構造解析を行った結果、配位の形態に応じてNHOのオレフィン部分の長さが変化しており、計算科学によってそのオレフィンの二重結合性が大きく変化していることも分かった。また、[Rh(CO)2Cl]2と反応させると[(NHO)Rh(CO)2Cl]錯体も得られ、本錯体を用いて電子供与能を示すTEP値を算出した結果、NHCよりも強い電子供与能を有する配位子であることが分かった。更にこれまでに報告されている数例の2-メチレンイミダゾリン配位子と比較すると、今回合成した2-メチレンイミダゾリジン配位子の電子供与能の方が低かった。カチオン性を帯びるヘテロ環が芳香族性を獲得する2-メチレンイミダゾリン配位子の方が環外オレフィンの分極がより大きく、配位原子である環外炭素の電子密度が高く保たれているためと推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は配位子前駆体の合成を簡便にするために触媒的脱水素化反応を開発し、窒素上のアルキル鎖が種々異なる配位子ライブラリーを容易に構築できる目処がたった。また、同じ配位子を用いて異なる錯体を合成する反応条件を見出しており、今後配位子の構造のみならず錯体の構造が触媒へ応用した際に及ぼす影響が精査できるものと期待する。独自に開発したNHOが持つ電子供与能も一般的に広く用いられるNHCより高いなど触媒として応用する指標となりうるデータが得られており、概ね順調に進展しているものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度確立した合成法を用い、窒素上の置換基が異なるNHO配位子ライブラリーを構築し、それぞれのパラジウム錯体やロジウム錯体を合成し、結晶構造解析等の各種解析によって窒素上の置換基が環外オレフィンに対して及ぼす影響を精査する。また、ビシクロ骨格を今年度用いた[2.2.2]から[2.2.1]に変更し、異なる骨格がオレフィン部に対して及ぼす影響を調査する。これらの過程で得られるパラジウム錯体をカップリング反応などに適用して他の配位子との比較、新規反応の開発等を試みる。
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