令和5年度では、前年度に合成したD‐体のアミダイトブロックを用い、オリゴマーの合成を行った。自動 DNA/RNA 合成装置を使用して配列の中央に修飾ヌクレオシドを含むオリゴヌクレオチドを調製した。 修飾ヌクレオシドを含むアミダイトブロックのカップリング効率は、トリチルモニター上で市販の天然アミダイトブロック同様ほぼ定量的に進行した。脱保護等を経て、C18 カートリッジ カラムで精製した後、得られた オリゴヌクレオチドをLC-MSで分析し、その構造を有することを確認した。 今回調整したオリゴヌクレオチドは、ssDNAやssRNAと二重鎖を形成するものの天然ヌクレオシドのみのオリゴヌクレオチドと比べ、融解温度(Tm)は10度程度下がり、熱的不安定化を引き起こした。これは、近年注目を集めるフレキシブルな構造を含んだUNAやGNAと同等と評価することができ、この結果は、我々が合成したヌクレオシド誘導体が、望ましくないハイブリダイゼーションの不安定化を導入し、オフターゲットの緩和を達成できる可能性を示唆している。 エナンチオダイバージェントな合成を達成するためL-体の合成ルート確立についても検討を行い、ラセミ体を用いた合成研究を展開した。2つある1級水酸基をジメシル体へと変換した後、2位カルボニル基との分子内SN2反応を行い、O-シクロ体を合成した。同誘導体を経由することで一方の水酸基を選択的に保護した形になり、以降数工程を経て目的とするL-体の合成を可能とする合成法の開発に成功した。
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