研究実績の概要 |
触媒的環化異性化反応を鍵反応とする多環式ビルディングブロック構築とその応用についての研究を行い、本年度は下記の成果を得ることができた。 (1) 前年度に見出していた1,5-ジアリール-1-ペンチンの7-endo型分子内環化反応について種々条件を検討した結果、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)を溶媒に用い、p-TsOHを触媒に用いると9-アリールベンゾスベレン誘導体が極めて高い収率で得られることを見いだした。本反応は特段の無水条件または不活性ガス雰囲気下での操作を必要とせず、p-TsOHも水和物を用いることができることが判明した。本法を利用して、強力な細胞毒性を示す天然物コンブレタスタチンA4の安定類縁体であるKGP-18の効率的合成を達成した。 (2) ブレンステッド酸触媒とフルオラスアルコール溶媒を用いた分子内Friedel-Crafts反応は1,4-ジアリール-1-ブタノール誘導体の環化反応にも利用できることを見いだし、本反応を利用してシナウリノキ (Alangium chinense)の葉から単離・構造決定され、シナプスネットワークの自発的カルシウム振動(SCOs)の阻害作用を示すカジナン型セスキテルペノイドであるAlanense Aの初の全合成を達成した。 (3) ブレンステッド酸触媒とフルオラスアルコール溶媒の組合せはトリメチルシリルシアニドを用いたベンジルアルコールの直接的シアノ化にも利用できることを見いだした。現在本反応の条件最適化と適用範囲拡張に向け検討中である。
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