研究課題
芳香環をジエンとして直接利用する脱芳香族的Diels-Alder(以下DA)反応は、架橋多環式化合物を合成する上で魅力的な手法である。しかし、芳香環が有する高い芳香族安定化エネルギーを乗り越える脱芳香族的反応は一般的に難しいため、ジエンとして利用可能な芳香環や求ジエン体に使用できるアルキンは高反応性のものに限られている。反応性が低い芳香環をジエンとして用いるアルキンとの分子内DA 反応は数例しか報告例がなく、収率の低さや基質適用例の少なさ、過酷な条件(高温高圧)を要する等のいずれかの課題が未解決となっており、系統的な研究は未だになされていない。申請者は、ナフタレンのペリ位に芳香環とアルキンを連結させた基質であれば、両者が互いに接近しやすい位置となるため、芳香環とアルキンとの間で脱芳香族的DA 反応が進行するのではないかと考えた。本研究では、以下の3点について成果を上げた。(1) チオフェンをジエンとして直接利用する脱芳香族的DA反応/脱硫反応を開発した。本反応では自発的に脱離したチオフェン由来の硫黄が副反応を引き起こすため、脱硫剤としてホスフィン類を添加することが重要であることを明らかにした。本反応により有機発光材料によくみられるフルオランテンを与えることから、生成物としても利用価値が高い(Chem. Asian J. 2024)。(2) フランをジエンとして直接利用する脱芳香族的DA反応/開環反応を開発した。従来法では中程度の収率でしか目的物は得られなかったが、本法ではより穏やかな条件で高収率で目的とする8-ヒドロキシフルオランテンを合成できた。(3) メトキシナフタレンをジエンとして直接利用する脱芳香族的DA反応を開発した。さらに反応条件を変えることで、後につづくタンデム反応(加水分解反応もしくは逆DA反応)の切り替えが可能であることも見出した。
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Chemistry - An Asian Journal
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