研究課題/領域番号 |
21K06468
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
井上 貴雄 国立医薬品食品衛生研究所, 遺伝子医薬部, 部長 (50361605)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アンチセンス医薬品 / 細胞内取り込み機構 |
研究実績の概要 |
近年、アンチセンスやsiRNAに代表される核酸医薬品の開発が進展しており、治療法のない遺伝性疾患や難治性疾患に対する次世代医薬品として注目を集めている。現状では、アンチセンス医薬を中心に15品目の核酸医薬品が上市されているが、その潜在的な課題として細胞内への送達効率が低い点が指摘されている。この課題に対して、オリゴ核酸を構成する核酸の化学修飾、オリゴ核酸の末端の修飾(脂質、糖などの付加)、送達キャリアの活用など、膜あるいは膜タンパク質との親和性を高める試みが行われているが、実用化の観点から更なる技術革新が望まれている。 我々はこれまでに、アンチセンスの細胞内取り込みに関与する遺伝子を探索するために、「GFP発現細胞に対してGFP RNAを分解するRNA分解型アンチセンスを添加し、GFP蛍光をモニターするアッセイ系」と「スプライシング制御型アンチセンス(SSO)を用いたジストロフィン遺伝子の特定のエクソンのスプライスアウトを検出する系」の2種類のスクリーニング系を構築し、候補遺伝子群を特定してきた。 本年度は、本年度は特定した補遺伝子群の中から、膜タンパク質や細胞内輸送に関連するタンパク質など細胞内取り込みに関与する可能性のあると思われる遺伝子を選定し、遺伝子破壊株及び過剰発現株を樹立した。遺伝子破壊株については、CRISPR-Cas9システムを用いたゲノム編集を行い、10数遺伝子について破壊株の作製を完了し、性状解析を行った。複数の遺伝子破壊株において、RNA分解型アンチセンスの効果を解析した結果、有効性の顕著な低下が確認された。過剰発現株おいては、複数の遺伝子の過剰発現株で、アンチセンスのRNA分解活性の増大が観測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は上述の通り、これまでに実施してきたヒト全遺伝子を対象とした網羅的スクリーニングによって絞り込んだ候補分子の中から複数遺伝子の遺伝子破壊株と過剰発現株の樹立に成功した。樹立した遺伝子破壊株の1種に複数種類のRNA分解型アンチセンスを導入試薬を用いない Free uptake 法により作用させたところ、全てのアンチセンスにおいて標的 RNA の分解活性の減弱が確認された。過剰発現株おいては、標的 RNA の分解活性の増大が確認された。 この結果より、この遺伝子が、配列に依存せず、アンチセンスの取り込み・輸送に関与している可能性が示唆された。以上より、順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今年度樹立した細胞株の性状解析を更に進め、当該遺伝子の基質特異性の特定を行う。当該分子がアンチセンスの細胞内取り込みや細胞内輸送におけるどのステップで機能をするかを明らかにする。これにより、核酸医薬品の細胞内送達の律速となるKey moleculeを同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度実施した解析については、当初予定した費用内で実施することができたため、次年度使用額が生じた。次年度使用額については、来年度に実施する検証の試薬類等に使用する予定である。
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