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2022 年度 実施状況報告書

アンチセンス医薬品の細胞内送達に関与する分子群の機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 21K06468
研究機関国立医薬品食品衛生研究所

研究代表者

井上 貴雄  国立医薬品食品衛生研究所, 遺伝子医薬部, 部長 (50361605)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード核酸医薬品
研究実績の概要

近年、アンチセンスやsiRNAに代表される核酸医薬品の開発が進展しており、治療法のない遺伝性疾患や難治性疾患に対する次世代医薬品として注目を集めている。2023年5月現在、アンチセンス医薬を中心に17品目の核酸医薬品が上市されているが、その潜在的な課題として細胞内への送達効率が低い点が指摘されている。この課題に対して、オリゴ核酸を構成する核酸の化学修飾、オリゴ核酸の末端の修飾(脂質、糖などの付加)、送達キャリアの活用など、膜あるいは膜タンパク質との親和性を高める試みが行われているが、実用化の観点から更なる技術革新が望まれている。
我々はこれまでに、アンチセンスの細胞内取り込みに関与する遺伝子を探索するために、「GFP発現細胞に対してGFP RNAを分解するRNA分解型アンチセンスを添加し、GFP蛍光をモニターするアッセイ系」と「スプライシング制御型アンチセンス(SSO)を用いたジストロフィン遺伝子の特定のエクソンのスプライスアウトを検出する系」の2種類のスクリーニング系を構築し、候補遺伝子群を特定し、膜タンパク質や細胞内輸送に関連するタンパク質など細胞内取り込みに関与する可能性のあると思われる遺伝子について、遺伝子破壊株及び過剰発現株の樹立を行ってきた。
本年度は、昨年度に樹立した候補遺伝子の遺伝子破壊株及び過剰発現株の詳細な性状解析を行った。鎖長、配列の異なる様々なRNA分解型アンチセンスを用いてRNA分解能の効果を解析した結果、複数の遺伝子破壊株で全てのアンチセンスにおいて有効性が顕著に低下することが確認された。また、これらの遺伝子の過剰発現株においては、複数のアンチセンスのRNA分解活性の増大が観測された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は上述の通り、これまでに実施してきたヒト全遺伝子を対象とした網羅的スクリーニングによって絞り込んだ候補分子の遺伝子破壊株と過剰発現株の性状解析を行った。樹立した複数の遺伝子破壊株に複数種類のRNA分解型アンチセンスを導入試薬を用いない Free uptake 法により作用させたところ、いくつかの遺伝子破壊株において全てのアンチセンスにおいて標的 RNA の分解活性の減弱した。これらの遺伝子の過剰発現株おいては、同様に複数のアンチセンスにおいて標的 RNA の分解活性の増大が確認された。
この結果より、これらの遺伝子が、配列に依存せず、アンチセンスの取り込み・輸送に関与している可能性が示唆された。以上より、順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

今後は、今年度樹立した細胞株の性状解析を更に進め、当該遺伝子の基質特異性の特定を行う。当該分子がアンチセンスの細胞内取り込みや細胞内輸送におけるどのステップで機能をするかを明らかにする。これにより、核酸医薬品の細胞内送達の律速となるKey moleculeを同定する。

次年度使用額が生じた理由

本年度実施した解析については、当初予定した費用内で実施することができたため、次年度使用額が生じた。次年度使用額については、2023年度に実施する検証の試薬類等に使用する予定である。

  • 研究成果

    (17件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 7件)

  • [雑誌論文] 核酸医薬 -RNAに作用する分子標的薬-2023

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 雑誌名

      小児内科

      巻: 55(2) ページ: 185-191

  • [雑誌論文] 核酸医薬とmRNA医薬 -RNAレベルでの生体制御-2023

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 雑誌名

      核酸医薬・mRNA医薬の製造分析の基礎と基盤技術開発

      巻: - ページ: 1-11

  • [雑誌論文] 核酸医薬開発の潮流2022

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 雑誌名

      Dementia Japan

      巻: 36 ページ: 245-257

  • [雑誌論文] 核酸医薬 -オリゴ核酸による遺伝子発現制御-2022

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 雑誌名

      遺伝子医学

      巻: 12 ページ: 73-86

  • [雑誌論文] 先を読み、備える2022

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 雑誌名

      Drug Delivery System

      巻: 37 ページ: 193-194

  • [雑誌論文] Identification of nucleobase chemical modifications that reduce the hepatotoxicity of gapmer antisense oligonucleotides2022

    • 著者名/発表者名
      Yoshida T, Morihiro K, Naito Y, Mikami A, Kasahara Y, Inoue T, Obika S
    • 雑誌名

      Nucleic Acids Research

      巻: 50 ページ: 7224-7234

    • DOI

      10.1093/nar/gkac562

    • 査読あり
  • [学会発表] 線虫における核酸トランスポーターSID-1のヒト相同分子の解析2023

    • 著者名/発表者名
      楠本嵩志, 佐々木澄美, 立花洸季, 橋本蒼太, 山口絢香, 小川真奈加, 石原理沙, 吉田徳幸, 井上貴雄, 奥平桂一郎
    • 学会等名
      日本薬学会第143回年会
  • [学会発表] 核酸・遺伝子医薬の品質・安全性確保に向けた規制科学研究2023

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 学会等名
      第1回TRSアカデミアコンソーシアムシンポジウム(第8回 Translational and Regulatory Sciences Symposium)
    • 招待講演
  • [学会発表] 核酸医薬の安全性確保:毒性の予測と回避2022

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 学会等名
      日本薬剤学会第37年会学術シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] 核酸医薬の規制整備 -革新的医薬品等実用化促進事業のバトンを受けて-2022

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 学会等名
      第12回レギュラトリーサイエンス学会学術大会
    • 招待講演
  • [学会発表] RNA分解型アンチセンスによる肝毒性の低減手法に関する研究2022

    • 著者名/発表者名
      吉田徳幸, 森廣邦彦, 内藤雄樹, 三上敦士, 笠原勇矢, 小比賀聡, 井上貴雄
    • 学会等名
      第59回全国衛生化学技術協議会年会
  • [学会発表] アンチセンス核酸医薬のモデルとしてのRNA/DNA二重鎖におけるRNA鎖長が熱力学的パラメータに与える影響2022

    • 著者名/発表者名
      冨田恵麗沙, 秋田智香, 柏木歩夢, 佐野蓮心, 畠中陸希, 井上貴雄, 小比賀聡, 川上純司
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] アンチセンス核酸のオフターゲット効果に対する塩基長の影響2022

    • 著者名/発表者名
      吉田徳幸,安原秀典,佐々木澄美,小比賀聡,井上貴雄
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] 核酸医薬の開発動向と将来展望2022

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 学会等名
      日本人類遺伝学会第67回大会
    • 招待講演
  • [学会発表] なぜ、いま核酸医薬なのか2022

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 学会等名
      第43回Tonomachi Cafe
    • 招待講演
  • [学会発表] 次世代モダリティの 安全性確保に向けた取り組み2022

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 学会等名
      生体機能と創薬シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] 核酸医薬の 開発動向と安全性評価2022

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 学会等名
      第6回JSSX-APDD合同ワークショップ
    • 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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