• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実施状況報告書

アンチセンス医薬品の細胞内送達に関与する分子群の機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 21K06468
研究機関国立医薬品食品衛生研究所

研究代表者

井上 貴雄  国立医薬品食品衛生研究所, 遺伝子医薬部, 部長 (50361605)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
キーワード核酸医薬品
研究実績の概要

近年、アンチセンスやsiRNAに代表される核酸医薬品の開発が進展しており、治療法のない遺伝性疾患や難治性疾患に対する次世代医薬品として注目を集めている。2024年5月現在、アンチセンス医薬を中心に19品目の核酸医薬品が上市されているが、その潜在的な課題として細胞内への送達効率が低い点が指摘されている。この課題に対して、オリゴ核酸を構成する核酸の化学修飾、オリゴ核酸の末端の修飾(脂質、糖などの付加)、送達キャリアの活用など、膜あるいは膜タンパク質との親和性を高める試みが行われているが、実用化の観点から更なる技術革新が望まれている。
我々はこれまでに、アンチセンスの細胞内取り込みに関与する遺伝子を探索するために、「GFP発現細胞に対してGFP RNAを分解するRNA分解型アンチセンスを添加し、GFP蛍光をモニターするアッセイ系」と「スプライシング制御型アンチセンス(SSO)を用いたジストロフィン遺伝子の特定のエクソンのスプライスアウトを検出する系」の2種類のスクリーニング系を構築し、候補遺伝子群を特定し、膜タンパク質や細胞内輸送に関連するタンパク質など細胞内取り込みに関与する可能性のあると思われる遺伝子について、遺伝子破壊株及び過剰発現株の樹立を行ってきた。
本年度は、引き続き樹立した候補遺伝子の遺伝子破壊株及び過剰発現株の詳細な性状解析を行った。その結果、複数の遺伝子破壊株において、鎖長や配列の異なる様々なRNA分解型アンチセンスの有効性が顕著に低下することが確認された。過剰発現株においては、複数のアンチセンスのRNA分解活性の増大が観測された。更に、スプライシング制御型アンチセンスを用いて解析を行ったところ、いくつかの遺伝子破壊株においてエクソンのスプライスアウトの効率の低下が確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は上述の通り、これまでに実施してきたヒト全遺伝子を対象とした網羅的スクリーニングによって絞り込んだ候補分子の遺伝子破壊株と過剰発現株の性状解析を更に行った。樹立した複数の遺伝子破壊株に複数種類のRNA分解型アンチセンスを導入試薬を用いない Free uptake 法により作用させたところ、いくつかの遺伝子破壊株において全てのアンチセンスにおいて標的 RNA の分解活性が減弱した。これらの遺伝子の過剰発現株おいては、同様に複数のアンチセンスにおいて標的 RNA の分解活性の増大が確認された。更に、複数の細胞株で、スプライシング制御型アンチセンスの有効性の低下も確認された。
この結果より、これらの遺伝子が、配列に依存せず、「アンチセンスの細胞内取り込みに共通して機能する分子」であると期待される。以上のとおり、当該研究は順調に進展している。

今後の研究の推進方策

今後は、樹立した細胞株の性状解析を更に進め、当該遺伝子の基質特異性の特定を行う。当該分子がアンチセンスの細胞内取り込みや細胞内輸送におけるどのステップで機能をするかを明らかにする。これにより、核酸医薬品の細胞内送達の律速となるKey moleculeを明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

本年度実施した解析については、当初予定した費用内で実施することができたため、次年度使用額が生じた。次年度使用額については、2024年度に実施する検証の試薬類等に使用する予定である。

  • 研究成果

    (23件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (4件) 学会発表 (19件) (うち招待講演 15件)

  • [雑誌論文] Drug Metabolism and Pharmacokinetics of Antisense Oligonucleotide Therapeutics: Typical Profiles, Evaluation Approaches, and Points to Consider Compared with Small Molecule Drugs2023

    • 著者名/発表者名
      Takakusa Hideo、Iwazaki Norihiko、Nishikawa Makiya、Yoshida Tokuyuki、Obika Satoshi、Inoue Takao
    • 雑誌名

      Nucleic Acid Therapeutics

      巻: 33 ページ: 83~94

    • DOI

      10.1089/nat.2022.0054

  • [雑誌論文] 核酸医薬のオフターゲット効果に起因する毒性の予測・評価法2023

    • 著者名/発表者名
      吉田徳幸,井上貴雄
    • 雑誌名

      Clinical Neuroscience

      巻: 41 ページ: 652~657

  • [雑誌論文] 核酸医薬 -オリゴ核酸で構成される新しいくすり-2023

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 雑誌名

      Clinical Neuroscience

      巻: 41 ページ: 598~603

  • [雑誌論文] 核酸医薬の規制整備に向けた取り組み2023

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄,吉田徳幸
    • 雑誌名

      Medical Science Digest

      巻: 49 ページ: 648~652

  • [学会発表] 既承認核酸医薬品の組織分布評価における分析法2024

    • 著者名/発表者名
      今井峻司,深野泰史,庭山裕孝,田村直美,三好美佳,福原慶,小平浩史,岩崎紀彦,山中陽介,宮澤憲浩,高草英生,角辻賢太,後藤昭彦,島田俊介,吉田徳幸,小比賀聡,西川元也,井上貴雄
    • 学会等名
      第15回JBFシンポジウム
  • [学会発表] 核酸医薬開発の現状と安全性確保に向けた取り組み2024

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 学会等名
      第4回ファーマラボEXPO
    • 招待講演
  • [学会発表] アンチセンス医薬のオフターゲット効果に対する塩基長の影響2024

    • 著者名/発表者名
      吉田徳幸,安原秀典,佐々木澄美,小比賀聡,井上貴雄
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
  • [学会発表] 線虫の核酸トランスポーターSID-1のヒト相同分子の解析2024

    • 著者名/発表者名
      楠本嵩志,佐々木澄美,橋本蒼汰,巻怜奈,大野寛人,吉田徳幸,井上貴雄,奥平桂一郎
    • 学会等名
      日本薬学会第144年会
  • [学会発表] 乱立するモダリティの中で核酸医薬はどうあるべきか2023

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 学会等名
      バイオインベストメントギルドセミナー 「核酸医薬開発の停滞を破る鍵 -アンチセンスDNAを中心-」
    • 招待講演
  • [学会発表] 核酸医薬の安全性確保に向けた取り組み:毒性の予測と回避2023

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 学会等名
      第70回日本実験動物学会総会
    • 招待講演
  • [学会発表] 核酸医薬による毒性発現の予測・評価に関する研究2023

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 学会等名
      第50回日本毒性学会学術年会
    • 招待講演
  • [学会発表] 次世代モダリティのオフターゲット毒性の予測・評価に関する考察2023

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 学会等名
      第50回日本毒性学会学術年会
    • 招待講演
  • [学会発表] 核酸医薬およびmRNA医薬の品質・安全性確保に向けた取り組み2023

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 学会等名
      第3回令和の薬剤学を考える懇談会(第58回薬剤学懇談会研究討論会)
    • 招待講演
  • [学会発表] 核酸医薬開発の現状と今後の展望2023

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 学会等名
      第5回ファーマラボEXPO
    • 招待講演
  • [学会発表] ヒト肝キメラマウスを用いたアンチセンスによる肝毒性の予測・評価法2023

    • 著者名/発表者名
      吉田徳幸,佐々木澄美,田中浩揮,大竹誠司,加國雅和,笠原勇矢,齋藤嘉朗,秋田英万,小比賀聡,井上貴雄
    • 学会等名
      日本核酸医薬学会第8回年会
  • [学会発表] 動物試験で検出困難な毒性を予測するオフターゲット評価法に関する研究2023

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 学会等名
      質量分析 フォーラム2023第1回
    • 招待講演
  • [学会発表] 核酸医薬の開発動向と規制整備に向けた取り組み2023

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 学会等名
      PHARM TECH JAPAN ONLINE WEBセミナー「核酸医薬の現状と今後の展望」
    • 招待講演
  • [学会発表] 動物試験で検出困難な毒性を予測するオフターゲット評価法に関する研究2023

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 学会等名
      質量分析 フォーラム2023 第2回
    • 招待講演
  • [学会発表] 次世代モダリティの安全性評価2023

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 学会等名
      日本安全性試験受託研究機関協議会 定期講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] 核酸医薬の現状と展望2023

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 学会等名
      東京医科歯科大学医歯薬産業技術セミナー
    • 招待講演
  • [学会発表] 核酸医薬への期待と課題 -安全性評価と薬物動態評価-2023

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 学会等名
      薬物動態談話会第46年会
    • 招待講演
  • [学会発表] 核酸医薬/mRNA医薬の品質・安全性・薬物動態評価2023

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 学会等名
      JBA創薬モダリティ基盤研究会講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] 核酸医薬の安全性確保に向けた取り組み2023

    • 著者名/発表者名
      井上貴雄
    • 学会等名
      第44回日本臨床薬理学会学術総会
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi