研究実績の概要 |
遷移金属触媒を用いたsp3炭素-水素結合の直截的な官能基化による複素環化合物の合成法は,アトムエコノミー(原子効率)・ステップエコノミー(短工程)に優れた有用な手法である.しかしながらこれまでの報告は,金属や超原子価ヨウ素,過酸化物等の酸化剤を化学量論量以上用いており,安価な試薬を用いた廃棄物を出さない新規化学プロセスの開発が求められている.今回私は,銅と酸素分子から形成される copper-oxo 錯体を用いることで,分子状酸素を酸化剤としたsp3炭素-水素結合官能基化反応が進行し,含窒素および含酸素複素環骨格の構築が可能になると考え研究を行った. C(sp3)-H 結合官能基化による新たなイソキサゾリン骨格構築法の開発を目指し,研究を行った.初めに,(Z)-2,2-Dimethyl-1,3-diphenylpropan-1-one oximeをモデル基質とし,反応条件の検討を行った.検討の結果,Cu(OAc)2 5 mol%, 4-methoxypyridine 20 mol%, DCE溶媒中, 100 °C, 酸素雰囲気下にて反応を行うと高収率でイソキサゾリンが得られた.続いて本最適条件を用いて基質適用範囲の検討を行った.オキシム側のベンゼン環上の置換基,および,オキシムβ位に隣接するベンゼン環上の置換基についてはその電子状態に関わらず,いずれの基質においても良好に反応が進行した.さらに,アミドオキシムを基質として本反応条件に付すことにより,オキサジアゾリン骨格も構築可能であった.
|