研究課題/領域番号 |
21K06478
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
小西 英之 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (20565618)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 気体分子 / 等価体 / 一酸化炭素 / 二酸化硫黄 / 安全 / 実用的 |
研究実績の概要 |
気体分子等価体から化学反応により生じる気体分子を「存在量の時間制御が可能な合成素子」として活用することを目指し、以下の新規反応開発に取り組んだ。 一酸化炭素(CO)の等価体を用いる開放系カルボニル化反応の開発について、反応に関与する単工程ごとの詳細な速度論的解析を行い、昨年度までに行った化学種の存在量の時間変化の検討とあわせて、反応速度を自在に制御可能なCO生成反応がPd触媒的カルボニル化反応よりも遅い場合に開放系カルボニル化反応が円滑に進行することを確認し、当初の仮説が正しいことを裏付ける結果を得た。また、反応中間体の解析や反応の計算化学的解析を行い、反応経路に関する有用な知見を得た。 CO等価体を用いる非対称ケトン合成法の開発について、本反応に有効な配位子を見出し、これまでの課題であった再現性を確保できた。これにより、昨年度までに開発した新規等価体を用いて概ね中程度の収率で様々な非対称ケトンが合成できるようになった。さらに、ある種のアミドが光反応条件でアシルラジカル源となることを見出し、非対称ケトン合成に活用できる可能性を見出した。 二酸化硫黄(SO2)の等価体を用いる対称スルフィド合成法の開発において、反応条件の最適化によりヨードアレーン類から良好な収率で対称スルフィドを合成する一般的な手法を確立することができた。反応機構の解明にはさらなる検討を要するが、本反応はSO2等価体から生成するSO2が反応系中で何らかの還元反応を受けることで生じた低原子価の硫黄原子を分子に導入するものであり、過去には特殊な基質に対してのみ進行する1例しか報告されていない極めて新規性の高い反応である。また、過去に報告したSO2等価体を用いるスルホンアミドやスルフィンアミドの合成法とあわせると、SO2等価体を用いて様々な価数の硫黄原子を選択的に導入する手法を開発することができたと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究費の受領により研究を開始した窒素酸化物等価体を用いる新規有機合成反応の開発については残念ながら大きな進展はなく、さらなる検討が必要と考えられる。しかし、一酸化炭素等価体や二酸化硫黄等価体を用いる新規有機合成反応の開発や、反応機構の解明に関する研究は当初の計画通り順調に進んだ。特に、非対称ケトン合成法の開発において一酸化炭素等価体を用いない新しいアプローチによるケトン合成の可能性を見出したり、対称スルフィド合成法について論文を執筆したりして、想定以上に研究が進展した。したがって、総合的に判断して本研究は概ね順調であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
開放系カルボニル化反応について、系中で生成していると考えられる中間体の構造解析や、反応経路自動探索ソフトウェアの利用による存在しうる反応経路の抽出および評価を行い、本反応が開放系でも進行する理由を明らかにする。非対称ケトン合成反応について、さらなる反応条件最適化および光反応条件における反応開発を行う。2021年度中に二酸化硫黄等価体を用いて対称スルフィド類が合成できるようになったため、次なる目標として非対称スルフィド合成法の開発や、今までに実現していないスルホキシド合成法の開発に挑戦する。窒素酸化物等価体を用いる新規反応については一酸化窒素が関与する反応に焦点を絞り、分子にニトロソ基またはヒドロキシアミノ基を導入する新たな手法の探索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)購入が必要な実験器具や装置が少なかったことや、コロナ禍の影響により学会参加に関する費用がかからなかったこと、学生の減少により必要経費が下がったことが原因として挙げられる。
(計画)試薬やガラス器具、真空ポンプを購入予定である。
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