昨年度合成法を確立できた塩基部位をもつ新規キラルカルボン酸について、いくつかの誘導体の合成を行い、アルキルアミド類のC-Hフッ素化反応をモデル反応としてその触媒活性を検証した。その結果、塩基部位が電子不足になると触媒活性が低下する結果を得た。そのため、反応性向上を狙い、電子供与基をもつ塩基部位を導入したキラルカルボン酸を現在種々合成している。これにより触媒活性と立体制御を両立するキラルカルボン酸の導出につなげていく予定である。 一方で、我々の研究グループではアルケン類や芳香族化合物に対する不斉フッ素官能基化反応を様々検討してきたが、いずれも比較的電子豊富なものであった。実際、柔らかい求核剤であるアルケンと硬い求電子剤であるフッ素カチオン等価体との反応は難しく、特に電子不足と考えられるアルケン類に対する不斉フッ素官能基化反応はその困難さから全く検討されていなかった。我々は分子内に求核部位をもつジフルオロアルケンを基質に設定すれば、合成に多段階を要するトリフルオロメチル基をもつキラルな複素環類を一挙に構築できると着想した。そこで我々が開発したキラルジカルボン酸を用いて種々検討したところ、ジフルオロアリルアミド類を基質とすることで、トリフルオロメチル基をもつ新規キラルオキサゾリン誘導体を良好なエナンチオ選択性で与えることを見出した。本方法論はジフルオロアルケンに対する不斉フッ素官能基化反応の初の成功例である。
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