研究課題/領域番号 |
21K06480
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
久松 洋介 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 講師 (80587270)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 人工レセプター / ヘム / 蛍光 / 自己集合 / ホストゲスト化学 |
研究実績の概要 |
生体内で重要な役割を担うヘムを水中で高選択的に認識し蛍光応答する人工レセプターの開発は、ヘムが関連する生命現象解明の有用なツールとして期待されている。これまでにヘム結合親和性をもつ4-アミノキノリン部位を特徴とするピンセット型人工レセプターを開発したが、ヘムの分解産物であるビリベルジンやビリルビンに対するヘム選択性を改善する必要があった。 本研究では、ヘム高選択的な認識能を有する新規人工レセプターの開発に着手した。昨年度、4-アミノキノリン部位に加えてへム鉄に配位結合可能なイミダゾール基を導入した蛍光性人工レセプターを設計・合成し機能評価を行った結果、ヘム選択性が改善することを見いだした。しかし、人工レセプターおよび人工レセプター・ヘム複合体の自己集合が交錯する複雑な系であることが示唆された。 本年度は、4-アミノキノリン部位を有する人工レセプターの水溶性向上を期待した新たな人工レセプターの合成に取り組んだ。まず、分岐型オリゴグアニジン部位を設計・合成し、続いて銅触媒存在下、アジドとアルキンの付加環化反応(クリック反応)を用いて人工レセプターに導入することを試みた。当初、問題なくクリック反応が進行すると予想したが、一般的な条件では反応が進行しなかったため、現在、継続して反応条件の検討を進めている。 本研究を進める過程で、水中で望みの機能を発揮する人工ヘムレセプターの合理的設計指針を得るためには、4-アミノキノリン誘導体(人工ヘムレセプター)の水中での自己集合挙動を理解する必要があると考えた。そこで、両親媒性4-アミノキノリン誘導体を設計・合成し、水中での自己集合挙動を詳細に検討した。その結果、0.10 M NaClを含む緩衝液中でまず速度論的に生成する準安定分子集合体から熱力学的に安定な分子集合体へ段階的に変化する興味深い自己集合挙動を見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、4-アミノキノリン部位とイミダゾール基を有する人工ヘムレセプターの水溶性を改善するための設計・合成に取り組んだ。分岐型オリゴグアニジン部位をクリック反応で人工レセプターに導入することを試みたが、一般的な条件では合成を達成できなかったため、オリゴグアニジン部位の最適化および反応条件検討を進めている。一方で、4-アミノキノリン誘導体の水中での自己集合挙動を詳細に検討した結果、人工ヘムレセプターの設計指針における有益な知見が得られただけでなく、当初、まったく想定していなかった多彩なナノ構造体を構築するビルディングブロックとしての活用へ研究を拡張できた。一方で、4-アミノキノリン誘導体の構造と自己集合性の関連を踏まえて、人工ヘムレセプターの適切な位置に親水性を付与すれば、ヘムとの複合体形成時に生じる複雑な集合挙動を抑制することも可能になると期待している。現在、ヘムと単純な結合様式で複合体形成することを期待した水溶性人工ヘムレセプターの開発を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果を活用し、水溶性を改善した人工ヘムレセプターの合成を達成し機能評価を進める。分岐型オリゴグアニジンに加えて、分岐型ポリグリセロールを人工ヘムレセプターに導入することも検討し、早い段階で目的の人工ヘムレセプターを合成する。続いて、人工レセプターの蛍光応答性を利用して、ヘム結合親和性およびヘム選択性の定量的な評価を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度購入を予定していた消耗品のうち、購入する必要がなくなったものがあるため。次年度、合成や機能評価に必要となる試薬や消耗品購入費用として効率よく利用する。
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