研究実績の概要 |
5 員環のα,β-不飽和ラクトンであるブテノリドの特徴的なラジカル及び極性反応に着目し、それらの特徴を最大限に活かした、反応開発から天然物合成までを 網羅する包括的研究を進める。申請者らは先行研究にてブテノリドからの直接的な新規ラジカル発生法の開発に成功していることから、それを基盤とした 1) ブテノリドラジカルを介した新規反応開発研究、ならびに 2) ブテノリドの特徴的なラジカル/極性反応を駆使した真に効率的なgibberellin類の全合成研究を行う。
1)については、より多様な置換パターンを有するブテノリドに対するダイマー化のさらなる基質一般性を検討した。その結果、α-無置換ブテノリドに対するダイマー化はほとんど進行せず、ブテノリドα位の置換基のダイマー化に対する重要性が明らかになった。また電子求引性基 (ケトン、ハロゲン)をα-位に有するブテノリドに対してもダイマー化は進行せず、電子供与性基 (アルコキシ基、TMS基など) をα-位に有するブテノリドに対してはダイマー化が進行した。今後もより詳細なダイマー化の検討を続けていく。
一方2)については原料からわずか3工程でタンデム環化前駆体の合成に成功したため、続いてBirch還元によるp-メトキシフェニル部位のエノンへの還元を試みた。詳細な検討を行ったものの基質の分解が主に生じ、所望のエノンへの変換は大変困難であった。今後はBirch還元を経由しない合成経路へ変更し、引き続きgibberellin類の合成を目指す。
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