研究実績の概要 |
当該年度は0価ニッケル触媒を利用した1,6ー末端ジインと2,3-ビス(トリメチルシリル)シクロプロパノンの[2+2+3]付加環化反応の検討を中心に進めた。反応条件の詳細な検討の結果、配位子としては二座ホスフィンよりも単座ホスフィンが適しており、シクロヘキシルジフェニルホスフィンを用いると良好な収率で7-トリメチルシリルオキシー5ートリメチルシリルー1,2,3,7ーテトラヒドロアズレン誘導体が生成することを見出した。本反応は様々なジインに適用可能であり、アルキンを繋ぐテザー部を種々変更することにより多様な骨格を有する1,2,3,7-テトラヒドロアズレン誘導体が得られることが分かった。一方、1,6-内部ジインを基質とすると末端ジインとは異なり、ビスシリルシクロプロパノンの1位と2位の炭素-炭素結合が反応して、置換形式の異なる1,2,3,7-テトラヒドロアズレン誘導体が得られることが明らかになった。このように、末端アルキンか内部アルキンかの違いによって、同じ[2+2+3]環化付加反応でも全く異なる反応機構で進行している可能性を見出すことができた。 また同時にニッケル触媒を用いた2,3ービス(トリメチルシリル)シクロプロパノンとNーアルキニルアミド(イナミド)との環化付加反応による2-アミノシクロペンテン合成についても検討を進めており、現在目的化合物を生成させるための最適な反応条件の精査を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
1,6-ジインと2,3-ビスシリルシクロプロパノンの[2+2+3]環化付加反応の更なる検討を進める。特に基質が1,6-末端ジインと1,6-内部ジインの場合で、ビスシリルシクロプロパノンの反応位置が異なることについて、理論化学計算を機軸として反応機構解析を進める。さらにジインだけでは無く、ジエンやアレンなど他の多重結合性化合物と2,3-ビスシリルシクロプロパノンとの不可環化反応の検討を進め、多官能性の多環式化合物の新しい合成法開発に向けて精査を進める予定である。
|