研究課題/領域番号 |
21K06486
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
田口 博明 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (20549068)
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研究分担者 |
一二三 恵美 大分大学, 全学研究推進機構, 教授 (90254606)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 抗体酵素 / アルツハイマー病 / アミロイドベータ / タウタンパク質 / クリックケミストリー |
研究実績の概要 |
令和3年度は(1)軽鎖抗体とその変異体の発現と(2) 軽鎖抗体の二量体化の検討を行った。 (1) 軽鎖抗体とその変異体の発現:アミロイドベータペプチドに特異的な抗体で、アメリカにてアルツハイマー病の治療薬として初めて承認されたアデュカヌマブ(ADUHELM)の軽鎖を発現する野生型ベクターと、野生型を1アミノ酸点変異により軽鎖抗体の95番目のプロリンを除去した変異体ベクターの作製を行った。これまでの研究で軽鎖抗体の95番目のプロリンを除去することにより、軽鎖抗体に加水分解活性を付与または活性の向上が報告されている。これらベクターと大腸菌を用い野生型軽鎖抗体と変異体軽鎖抗体の発現を試みた。野生型と変異体の発現レベルはこれまでの軽鎖抗体の発現レベルと同程度であった。発現した軽鎖抗体はニッケルカラム、陽イオン交換カラム等を用い精製した後、電気泳動にて泳動後、クマシーブルー染色によりその純度を確認した。 (2) 軽鎖抗体の二量体化:軽鎖抗体酵素を用い選択的ヘテロ二量体化するため、クリック反応の条件検討を行った。モデル軽鎖抗体を用い、軽鎖抗体のC末端に存在するシステイン上のスルファニル基を、クリックケミストリーが適用できるようにシクロオクチン誘導体またはアジド基を有するマレイミド誘導体と反応させた。反応後ゲル濾過で誘導体試薬を除去した。シクロオクチン誘導体で修飾された軽鎖抗体モノマーとアジド基で修飾された軽鎖抗体モノマーをリン酸緩衝液中で反応させ、反応液を電気泳動法にて分析することにより反応の進行を確認した。種々の条件を検討したが、ほとんどが軽鎖抗体モノマーでごく少量の2量体化された軽鎖抗体が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
aducanumabの軽鎖抗体とその変異体を得ることができた。これら軽鎖抗体について生化学的評価が現在進行中である。 前年度は軽鎖抗体の二量体化について、ごく少量の二量体化された軽鎖抗体しか確認できなかったため、収量の向上を目指し、各工程の見直しが進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は得られた軽鎖抗体とその変異体について合成基質、FRET基質やアミロイドベータペプチドを用いて加水分解活性の測定を行う。また、上記加水分解で生成されたペプチド断片は、HPLCを用い単離し、質量分析によりその構造を決定する。その後、構造決定されたペプチド断片より加水分解部位の決定を行う。変異体のアミロイドベータペプチドへの親和性はELISA法により検討する。また、変異体の分子モデルを構築し加水分解活性との関係を詳細に解析する予定である。さらにチオフラビンTを用い変異体のアミロイドベータペプチド凝集阻害活性について調べる。 軽鎖抗体の二量体化について、前年度はごく少量の二量体化された軽鎖抗体しか確認できなかったため、軽鎖抗体の還元反応の条件、誘導体化試薬の調整条件、軽鎖抗体誘導体化反応の条件などの工程を詳細に検討し、二量体化反応前の軽鎖抗体に問題が無いか確認する。その後、二量体化反応の最適な反応条件(濃度、温度、時間、緩衝液など)を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度に参加を予定していた学会が、コロナ感染拡大により急遽オンライン開催となったため旅費が必要なくなった。また、研究計画上必要な蛍光プレートリーダーのフィルターがロシアのウクライナ侵攻により納期が数ヶ月となり、当該年度内に納品されなかった。フィルターについては速やかに入手し研究を計画通り遂行する。
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