研究課題/領域番号 |
21K06490
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
大岡 伸通 国立医薬品食品衛生研究所, 遺伝子医薬部, 室長 (80568519)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 標的タンパク質分解 / E3リガーゼ / ユビキチン / プロテアソーム |
研究実績の概要 |
近年、私達が開発したSNIPERもしくは海外のグループが開発したPROTACと呼ばれるキメラ化合物によって細胞内の標的タンパク質を特異的に分解する技術(プロテインノックダウン法)が確立され、新しい創薬技術して大きな注目を浴びている。これらの化合物は導入したリガンドを介して、E3リガーゼを標的タンパク質に強制的にリクルートし、ユビキチン・プロテアソーム系により分解する。現在のところ、様々な正常組織に普遍的に発現しているE3リガーゼ(IAP、VHL、CRBNなど)を標的分解に利用するキメラ化合物は開発されているが、組織特異的もしくは、がんなどの疾患特異的に発現するE3を標的分解に利用した化合物は報告されていない。本研究は、がんで特異的に発現しているE3を利用した新しいプロテインノックダウン法を開発することを目的とする。 独自に見出した、がん細胞特異的な標的分解を誘導するキメラ化合物がどのようながん種に対して抗がん活性を示すか、様々な組織由来のがん細胞株(106種類)を用いて調べたところ、がん種(A)に対して特に強い抗がん活性を示すことがわかった。既知の文献情報をもとにE3リガーゼ(X)に着目して研究を進めたところ、E3リガーゼ(X)は他の組織由来の細胞株ではほとんど発現しておらず、半数のがん種(A)由来細胞株で特異的に発現している(24種類の細胞株のうち12種類で発現している)ことが明らかになった。さらに、このキメラ化合物はE3リガーゼ(X)を発現しているがん細胞でのみ高い標的分解活性を示すことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通り、がん細胞特異的な標的分解を誘導するキメラ化合物がどのようながん種に対して抗がん活性を示すか明らかにすることができた。また、このキメラ化合物がE3リガーゼ(X)を発現しているがん細胞でのみ高い標的分解活性を示すことを新たに見出すことができた。これらのことから、本研究は順調に進行していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
独自に見出したキメラ化合物はユビキチン-プロテアソーム系により標的タンパク質を分解するか、標的タンパク質やE3リガーゼ(X)と細胞内で3者複合体を形成するか、キメラ化合物による標的タンパク分解にはE3リガーゼ(X)が必要であるかなど、詳細な分子メカニズム解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度以降に繰り越しされる研究費が生じた理由としては、年度末の学会の参加費及び旅費が未精算であること、本年度の研究が概ね順調に進展したことから無駄な物品費がかからなかったことが挙げられる。 繰り越し研究費の一部は本年度の未精算の学会参加費及び旅費に使用する予定である。また残りは、本年度の研究の進展から推測される次年度以降の研究計画を考えると物品費が多くかかることが予測されることから、物品費として使用する予定である。
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