研究課題/領域番号 |
21K06494
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
横川 真梨子 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 講師 (60648020)
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研究分担者 |
大澤 匡範 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (60361606)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | B型肝炎ウイルス / タンパク質―タンパク質相互作用 / NMR |
研究実績の概要 |
本研究では、B型肝炎ウイルス(HBV)が肝細胞に侵入する際に必須のpreS1とNTCPの相互作用、およびHBVの増殖時に必要なpreSとキャプシド(Cp)の相互作用を原子分解能で明らかにすることでHBVの肝細胞侵入・増殖のメカニズムを解明すること、さらに明らかにした相互作用様式に基づき、その相互作用を阻害する化合物を抗HBV薬候補化合物として提唱することを目的としている。 今年度は、preS1とNTCPの複合体の立体構造解析に向けて、サンプルの大量調製と結合親和性の定量的な解析を目指した。しかし、NTCPを再現性よく調製することに難航したため、目的の達成には至らなかった。一方で、preS1はミリストイル化されることが肝細胞膜上のNTCPとの結合に重要であることが知られている。そこで、NTCPの調製と並行してミリストイル化preS1の解析や、preS1に結合してNTCPとの相互作用を阻害することが報告されている化合物とpreS1との相互作用をNMR法や等温滴定型カロリメトリーにより調べた。その結果、溶液中においてミリストイル化preS1のミリストイル基が、preS1の疎水性領域と相互作用することが示唆された。また、preS1に結合してNTCPとの結合を阻害する化合物には、複数分子の化合物がpreS1に結合して、複合体の凝集を引き起こすものが存在することが分かった。現在、preS1を分割したペプチドを用いることにより化合物の結合部位や相互作用様式を明らかにし、preS1とNTCPの相互作用の阻害様式を解明することを試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NTCPの調製に難航したために当初の予定を遂行することはできなかったが、preS1側に結合する化合物に着目した解析を並行して進め、化合物がpreS1とNTCPとの結合を阻害する機構に関する情報を得ているため。
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今後の研究の推進方策 |
NTCPについては、引き続き再現性の高いサンプル調製法の検討を行う。また、preS1に結合する化合物によるpreS1とNTCPの相互作用の阻害様式を、原子分解能で解明する。 Cpとの結合に重要なpreSの領域をNMR法により同定し、複合体の立体構造をX線結晶構造解析またはクライオ電子顕微鏡法により解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
<次年度使用額が生じた理由> サンプル調製の再現性が取れず、立体構造解析に向けた大量調製を行わなかったため。 <使用計画> 次年度に引き続きサンプル調製法を検討したうえで、大量調製を行う予定である。また、preS1に対して結合する化合物の解析を行うにあたって、追加で安定同位体試薬が必要になるため、これらの解析に必要な消耗品を購入する予定である。
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