研究課題
本研究では、B型肝炎ウイルス(HBV)が肝細胞に侵入する際に必須のpreS1とNTCPの相互作用、およびHBVの増殖時に必要なpreSとキャプシド(Cp)の相互作用を原子分解能で明らかにすることでHBVの肝細胞侵入・増殖のメカニズムを解明すること、さらに明らかにした相互作用様式に基づき、その相互作用を阻害する化合物を抗HBV薬候補化合物として提唱することを目的としている。2023年度は、preS1に結合してNTCPとの相互作用を阻害することが報告されているカテキン二量体であるoolonghomobisflavan C (OHBF-C) とpreS1との相互作用を原子レベルで明らかにすることを目指した。NMR解析によりOHBF-Cと直接結合することが分かったpreS1を5分割した部分ペプチドのそれぞれについて、等温滴定型カロリメトリー (ITC) によるOHBF-Cとの相互作用の定量的な解析を試みた。しかし、0.1 mMのpreS1の部分ペプチドに対して1 mMのOHBF-Cを添加する実験条件では、結合にともなう有意な熱量変化がほとんど観測されなかったため、解離定数を算出することはできなかった。ITCとNMR実験の結果より、preS1部分ペプチドとOHBF-Cの解離定数は1 mM以上と考えたが、preS1ではOHBF-Cとの複数の結合領域がペプチド結合で連結され近傍に存在することにより、結合親和性が増大していると考える。さらに、OHBF-CにもpreS1結合部位が2個あるため、preS1とOHBF-Cは多価の相互作用により結合親和性が増大し、複合体が沈殿することが示唆された。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (14件)
Chemical Communications
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10.1039/d3cc01283b
FEBS Letters
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