研究課題/領域番号 |
21K06500
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研究機関 | 金城学院大学 |
研究代表者 |
黒崎 博雅 金城学院大学, 薬学部, 教授 (70234599)
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研究分担者 |
加藤 紘一 湘南医療大学, 薬学部医療薬学科, 講師 (80814821)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 感染症 / βーラクタム剤 / 亜鉛酵素 |
研究実績の概要 |
近年、NDM-1(New Delhi metallo-β-lactamase)と呼ばれる新型のメタロ-β-ラクタマーゼが2009年にインドから帰国したスウェーデン人から分離された。これまで知られているメタロ-β-ラクタマーゼは、緑膿菌などの日和見細菌からほとんど産生されていたのに対し、NDM-1は肺炎桿菌や大腸菌から分離され、市中感染し世界的な蔓延が危惧されている。NDM -1をはじめとするメタロ-β-ラクタマーゼは、ほとんど全てのβ-ラクタム剤を分解して不活化する。さらには、メタロ-β-ラクタマーゼに有効な臨床で使用される阻害剤がなく、クラブラン酸などのセリン-β-ラクタマーゼ阻害剤に対しては全く感受性を示さない。そこで、本研究では、我々が明らかにしたメタロ-β-ラクタマーゼの結晶構造の原子座標とドッキングシミュレーションを併用し、よりメタロ-β-ラクタマーゼを強く阻害する化合物の分子設計と合成を行うことを目的とした。本年度は、以前合成したダンシルブタンジアミンと3-メルカプトプロピオン酸とを縮合したN-[2-(5-dimethylamino-naphthalene-1-sulfonylamino)butyl]-3-mercaptopropionamide (DansylC4SH)にセファロスポリン中間体を結合した化合物(セファロスポリン-Dans)を合成し、メタロ-β-ラクタマーゼ並びにセリン-β-ラクタマーゼに対する分光特性を蛍光光度法により検討を行った。本阻害剤にセリン-β-ラクタマーゼを作用させると、ダンシル基に基づく蛍光スペクトルの強度は減少した。一方、メタロ-β-ラクタマーゼでは逆に蛍光強度の上昇が観測された。この違いから、本阻害剤はメタロ-β-ラクタマーゼの蛍光検出剤としても有用である可能性が示唆された。さらに数種類のセファロスポリン誘導体の合成も行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画よりもはややはやくメタロ-β-ラクタマーゼ阻害剤(セファロスポリン-Dans)並びに数種類のセファロスポリン誘導体が合成できた。さらには、セファロスポリン-DansのIMP型メタロ-β-ラクタマーゼに対する分光特性も明らかにすることができ、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
メタロ-β-ラクタマーゼ阻害剤(セファロスポリン-Dans)と数種類のセファロスポリン誘導体のメタロ-β-ラクタマーゼ阻害剤に対する阻害活性評価を行う予定である。さらには、共結晶を作成して、合成した化合物のメタロ-β-ラクタマーゼに対する阻害様式をX線結晶構造解析を行い、解明したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していたよりも化学合成がスムーズにでき、合成用試薬の購入が必要なかった。また、酵素の培養・精製のための生物系試薬も同様であった。その分、成果発表のための英文校閲と投稿料に充てることができた。
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