医薬品開発において、低分子化合物の経口投与以外による投与経路を利用した製剤開発が期待されている。経肺投与製剤は、薬効の発現が早く、気管支喘息などの肺局所治療だけでなく、全身性疾患治療にも応用可能な製剤である。本研究は、吸入粉末剤に焦点を当てた研究であり、薬物を肺深部炎症部位に直接到達可能なキャリアの開発を到達目標として、キャリアの粒子径、粒子形状等の制御を行ったものである。これまでに、薬物と添加剤との間で複合粒子(コンポジット粒子)を作製し、粒子径や形状などの粒子物性を制御した粒子設計が課題であり、これまでに生体適合性および安全性の高い添加剤として、高分子多糖類であるフィトグリコーゲンに着目し、薬物との複合粒子調製を試みている。昨年度までに新規手法として噴霧凍結乾燥法に挑戦し、試料溶液を液体窒素中に噴霧し凍結させ、凍結乾燥することで多孔質な微粒子を得る手法であり、種々デキストラン濃度における多孔質キャリアの創製に関して有用な新知見が得られた。 本年度は、フィトグリコーゲンの形態学的変化に焦点を当てた解析を行った。グルコースが高度に枝分かれし、溶液中で樹状のような構造を持つ化合物であり、噴霧乾燥法によりマトリックス型の機能性を持った粒子が設計可能である。噴霧乾燥法では、フィトグリコーゲンを含有する水・エタノール混合液中からの処理を行うことから、水・エタノール混合液のエタノール含量変化に伴う、エタノール含量と形状および粒子径の関係性について検討し、低エタノール含量下及び高エタノール含量下での粒子形状・粒子径の違いについて小角X線散乱法及び動的光散乱法により明らかとした。
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