研究課題/領域番号 |
21K06505
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
木下 充弘 近畿大学, 薬学部, 教授 (40330279)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | マイクロチップ電気泳動 / 糖鎖 / 代謝 |
研究実績の概要 |
2022年度は研究期間初年度に全自動マイクロチップ電気泳動装置を利用して開発した糖鎖解析システムについて、実利用性の検証として分離場として使用する電極埋め込み型石英製マイクロチップ、APTS標識糖鎖の分離に用いるゲルバッファーについての劣化試験を10か月に渡り実施した。石英製マイクロチップについては、特別な洗浄剤や洗浄工程なく水のみの洗浄でも分離能、電気泳動時間の再現性が保たれていた。また、分離に用いるゲルバッファーについても冷蔵保存のみでも、分析再現性は保持されており、本研究の目的である代謝と糖鎖の関係を明らかにするために必要となる大量試料かつ長期間での実利用レベルにあることを実証できた。これらの性能評価試験に加え、ヒト血清糖タンパク質糖鎖、培養細胞から得られた膜タンパク質由来糖鎖、エクソソーム由来糖鎖の分析への応用試験も実施し、汎用されるキャピラリー電気泳動法と同等レベルの分離能、10倍以上のスループットを達成できることを明らかにした。 2023年度第三四半期からは、各種培養細胞をAMPK活性化/阻害剤、EGF/FGFなど増殖因子など、細胞内代謝を変化させる薬剤存在下培養し、膜タンパク質から調製した糖鎖の分析へと応用し、本研究の最終目的である代謝と糖鎖の関係解明に向け、多検体試料について解析とデータの蓄積を本格化させた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は本研究の基盤である全自動マイクロチップ電気泳動装置を利用する糖鎖解析システムについて、実利用についての高い性能を実証でき、種々の代謝変化を伴う各種培養細胞由来の糖鎖の分析へと応用可能性を実証するとともに、本研究の最終目的である代謝と糖鎖の関係解明に向け、多検体試料について解析とデータの蓄積に本格的にスタートすることができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
これまで開発してきた糖鎖解析システムの実行可能性は実証されたため、本研究の目的である代謝と糖鎖の関係を明らかにするためのバイオ系実験量を増やし、代謝と糖鎖の関係について、従来のLCやMSベースによる解析ではなしえなかった膨大なデータの蓄積とその統計解析を目指す。特に、代謝と糖鎖の関係についてバイオ系研究でこれまでに得られなかった知見を得ることを目指すため、増殖シグナルパスウェイや転写・翻訳制御などの着眼点を用ちながら、例えば、遺伝子発現やタンパク質レベルからは予想が難しい、膜糖タンパク質のターンオーバーにおける糖鎖の微細不均一性変化の影響、がん細胞の運動性、浸潤能における膜糖タンパク質糖鎖の影響についての、既報のモデル系を利用して解析を進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は、特に糖鎖解析システムの検証を中心に研究を遂行したため、新規に購入する試薬類等が当初予定より少なくなったため次年度使用額が発生した。発生した次年度使用額分については、研究計画の最終年度の計画通り、開発するシステムを種々の細胞モデルへ適用するため、各種細胞培養用消耗品の購入、各種増殖因子、代謝調節因子まよびマーカータンパク質の検出の用の抗体などの購入を計画している。また、旅費については、BMAS2023(北海道)、日本糖質学会(鳥取)への参加を予定している。
|