研究課題/領域番号 |
21K06508
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
庵原 大輔 崇城大学, 薬学部, 准教授 (40454954)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | フラーレン / ナノ粒子 / 吸着 / 抗体 / タンパク質 |
研究実績の概要 |
腎疾患や肝疾患、自己免疫疾患、神経疾患などの各種病態時には疾病の原因となる有害物質が血液中に過剰に蓄積することが知られている。本研究では、生体内血液中で病因物質を吸着し、効果的に不活化または生体外へ除去する新たな生体内血液浄化療法の構築を企図して、各種カーボンナノ粒子の尿毒症物質や抗体などのタンパク質に対する吸着能を検討した。以下に得られた知見を要約する。 各種カーボンナノ粒子(C60、C70、水酸化C60)は CD 誘導体と低温で混合粉砕することで調製した。これらカーボンナノ粒子の粒子径は約50 nm、ζ-電位はC60、C70ナノ粒子では約-22mV 水酸化C60ナノ粒子では約-40mV であった。各種カーボンナノ粒子は尿毒症原因物質インドールやヒトIgG 抗体に対し、濃度依存的な吸着効果を示した。特にヒトIgG 抗体に対し高い吸着性を示し、500μM のナノ粒子存在下で吸着率は約70~100%であった。一方で、トリプトファン、グルタミン酸、リシン、グルタミンなどのアミノ酸を修飾したC60ナノ粒子のヒトIgG 抗体に対する吸着能は2~14%であり、著しく低下した。さらに、これらカーボンナノ粒子のヒトIgG抗体に対する吸着効果は尿素存在下では濃度依存的に低下した。このことから、これらカーボンナノ粒子は疎水性相互作用によりヒトIgG抗体に対し吸着性を示すものと推察された。 以上の結果より、カーボンナノ粒子はヒトIgG 抗体に対し、高い吸着性を示し、その表面物性を改変することで、吸着性を制御可能なことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では生体内血液中で病因物質を吸着し、効果的に不活化または生体外へ除去するナノ吸着炭素製剤を構築する。これまでに、アミノ酸修飾ナノ粒子など表面物性の異なる各種カーボンナノ粒子を調製し、表面物性の違いにより抗体などのタンパク質に対する吸着性を制御可能なことを明らかとした。尿毒症物質や LDL、抗 DNA 抗体、免疫複合体などの病因物質を特異的に吸着可能なカーボンナノ粒子の構築は順調に進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
各種カーボンナノ粒子のヒト血清アルブミンやアポリポタンパク質に対する吸着効果を検討する。さらに、病態モデル動物(慢性腎不全、SLE、高脂血症)から採取した全血および血漿を用いて、尿毒症物質や抗 DNA 抗体、アポリポタンパク質などに対する、生体内での吸着能を推察する。これら知見を基に、吸着能と粒子物性・表面構造の関連を明らかにし、各病因物質に対して特異的な吸着能を示すカーボンナノ粒子を創製する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年3月開催の日本薬学会第142年会へ参加するための旅費がオンライン開催となったため余剰となった。余剰金は旅費やHPLCカラム購入費として適切に使用する。
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