研究課題/領域番号 |
21K06509
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
東 顕二郎 千葉大学, 大学院薬学研究院, 准教授 (40451760)
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研究分担者 |
植田 圭祐 千葉大学, 大学院薬学研究院, 助教 (40755972)
森部 久仁一 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (50266350)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 非晶質ナノ粒子 / 界面 / 安定性 / NMR / cryo-TEM / 運動性 / 難水溶性薬物 |
研究実績の概要 |
本研究では、懸濁液中の薬物非晶質ナノ粒子と水の固液界面構造を分子レベルで評価し、その水分散安定化メカニズムを明らかにすることを目的としている。これまでに、suspended-state NMR法等を用いた検討により、保存前のシクロスポリン(CyA)非晶質ナノ懸濁液と保存後のCyA結晶ナノ懸濁液では安定化剤であるpoloxamer 407(P407)の分子状態が異なることを明らかとした。本年度は、CyA非晶質ナノ粒子の保存過程の変化を評価した。 Cryo-TEMを用いてナノ粒子の経時的な形態変化を観察したところ、oriented attachmentによりCyA結晶化が進行することが明らかとなった。保存前のナノ粒子(約400 nm)は、非晶質のCyAの小さい粒子(約50 nm程度)が集まった凝集体であった。48時間保存後には非晶質ナノ粒子内に複数の微結晶が生成し、52時間保存後では数多くの微結晶(約50 nm)が集合したメソ結晶が形成された。56時間保存後には約100 nmまで微結晶が成長し、60時間保存後には約200 nmのサイズを持つ単一な結晶に成長した。Oriented attachmentは古典的核生成理論とは異なる理論での結晶化プロセスであり、これまでの報告は無機化合物に限られていた。本研究において、医薬品有効成分でもoriented attachmentの経路により結晶化が起きることが初めて示された。 CyAに限らず他の医薬品有効成分でも、oriented attachmentにより結晶化している場合も多々あると予想される。今後は、本研究で見出したoriented attachmentを含めた様々な非古典的結晶化理論の構築が進むことで、より高品質な医薬品の創生が可能になると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CyA非晶質ナノ粒子がoriented attachmentにより結晶化することを見出した。当初予期していた結果とは異なったが、これまでに医薬品有効成分では報告のない新しい知見であった。一方、予定していたsuspended-state NMRによるCyA及びP407の分子状態評価は実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により見出した、CyA非晶質ナノ粒子のoriented attachmentによる結晶化過程をin situ suspended-state NMR測定により評価する。
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