研究課題
過去2年間の検討において、シクロスポリンA(CyA)/ポロキサマーP407(P407)からなる非晶質ナノ懸濁液を保存すると、非古典的結晶化理論であるoriented attachmentにより、CyA結晶ナノ懸濁液に変化することを見出した。最終年度は、CyA非晶質ナノ粒子の保存過程の変化をin situ suspended-state NMRを用いて評価した。パルスシークエンスとして溶液と固体を選択的に検出するPST/MAS測定及びCP/MAS測定をそれぞれ用いた。CP/MASスペクトルでは、CyAのピークが主に観察された。その結果、保存前はCyAは非晶質として存在するが、16~24時間の間にCyAの結晶化が進行し、40時間経過後にはCyAが結晶としてのみ存在することが示された。一方、PST/MAS測定では安定化であるポロキサマー(P407)のピークが主に観察された。16時間付近からナノ粒子に吸着したP407成分が減少し、溶液中でP407ミセルを形成しているP407成分が増加した。これらの結果より、CYA結晶化に伴い非晶質ナノ粒子に吸着していたP407が水相に放出されたことが示唆された。本研究期間内において、医薬品結晶化もoriented attachmentの経路により起きることを初めて見出した。また、in situ suspended-state NMR測定により薬物及び安定化剤の分子状態変化を観察することに成功した。本研究から得られた知見は、調製自体が非常に困難である薬物ナノ非晶質懸濁液の処方設計効率化・最適化に向けた有用な指針になると期待される。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
International Journal of Pharmaceutics
巻: 640 ページ: 122959~122959
10.1016/j.ijpharm.2023.122959
Pharm Tech Japan
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