研究実績の概要 |
昨年度に引き続き糖部架橋型人工核酸【グアニジノ基を有しグアニジノ窒素をメチル基とtert-ブチル基に置換した(GuNA[Me, tBu]】を導入したオリゴヌクレオチド(ON)のX線結晶構造の詳細を解析した。6番目のチミンにGuNA[Me, tBu]を導入したON(10-mer)では、一方の鎖ではtert-ブチル基は副溝側に位置したのに対し 、もう一方の鎖の tert-ブチル基は二重鎖の外側に位置していた。この結果は、GuNA[Me,tBu] を6番目に導入したため二本鎖 10-mer では互い隣接し、2つの tert-ブチル基の立体反発が生じ、副溝の tert-ブチル基が相補鎖のtert-ブチル基を外部に露出させたためと考えられた。そこでONを8-merにして2番目のチミンにGuNA[Me,tBu]を導入したところ、2つの tert-ブチル基はどちらも副溝側に位置するとともに、tert-ブチル基を導入したグアニジノ基の窒素原子と同じチミン残基の塩基にある 2位カルボニル基の酸素原子が水素結合を形成していた。この追加の水素結合に加えて tert-ブチル基と副溝の間の疎水性相互作用が二重鎖の安定性に大きく貢献していることが分かった。ONを8-merにして2番目のチミンにGuNA[Me,Me]を導入した二重鎖X線構造では追加の水素結合は認められなかった。以上の結果は熱安定性(Tm)の結果とも一致し、GuNA[Me,tBu] の tert-ブチル基が副溝にしっかりと結合して、且つ追加の水素結合が二重鎖結合の安定性に重要であることがわかった。 さらに新たな糖部架橋型人工核酸(1'-C,3'-O-プロピレン架橋型アルトリトール核酸)を3塩基連続して導入したON(8-mer)のX線構造も決定した。
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