研究実績の概要 |
病態マウス(コリン欠乏高脂肪食給餌NASHモデルマウス)を対象として、各脂質の脂肪酸側鎖を質量分析装置(MS)で区別して計測し、リン脂質と中性脂質の分析および定量を行いました。 病態マウスは通常マウスと比較すると、最初の測定時(4日後)に既に大きな脂肪沈着が肝臓に見られ、その後の組成比率の変化はそれほど大きくありませんでした。特に肝臓におけるトリアシルリセロール(TG)は5倍以上の量の脂質沈着があり、高度不飽和脂肪酸のうち、不思議な事にエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサペンタエン酸(DPA)の「割合」も病態モデルマウスの方が多かったです。にもかかわらず、血液中のTGにはその割合の変化は見られませんでした。リン脂質であるホスファチジルコリン(PC)は病態モデルマウスにおいて、中性脂質とは逆にgあたりの総量は減少しておりましたが、肝臓および血液中の両方でアラキドン酸の割合も量も増加しており、EPA,DPAは量、割合ともに減少していました。肝臓でもっとも割合に変化のあったリン脂質はホスファシジルグリセロール(PG)ですが、血液中には測定できる量は存在していませんでした。 以上のことから、TGに関しては、肝臓から直接サンプリングする必要がありますが、PCのような比較的濃度の高いリン脂質は血液を測定することで、肝臓の状況を推測することが可能です。ただ、通常の脂肪酸側鎖を持ったリン脂質だけの測定で肝臓の線維化を判定するのは難しいため、他に酸化脂質の定量といった指標が必要です。 今後の計画として、病態マウスの計測前に餌を通常食に戻し、可逆的な変化が見られるかどうかを検証したいと考えています。
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