腫瘍部位へ直接貼付する二層型シート状のコントロールドリリース製剤の開発に着手してきた。放出制御のため乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)を基剤に使用し、放出性および抗腫瘍効果向上のための製剤添加剤の選出および製剤最適化を行ってきた。最終年度については、製剤添加剤の腹腔側臓器表面からの薬物吸収性をin vitroでの透析膜透過実験による簡便な評価系で精査するとともに、引き続き二層型シート製剤の評価および最適化を実施した。抗癌薬ドキソルビシン(DOX)を搭載し、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリビニルピロリドン(PVP)を添加剤として併用した二層型シート製剤を作製し、放出性と担癌マウスでの抗腫瘍効果、体内分布を評価してきた。二層型シート製剤からDOXが持続的に放出され、添加剤の併用によりPLGAのみによるシート製剤より放出速度が向上し、添加剤濃度により放出速度をコントロールできる可能性が示唆された。また皮下担癌マウスの腫瘍へ各種シート製剤を14日間貼付し、腫瘍径と体重を測定したところ、DOXが腫瘍へ選択的に分布し、他臓器や血漿への移行が抑制された。相対腫瘍体積はPLGAシート製剤貼付群と比較して添加剤併用DOXシート製剤貼付群において約4分の1以下となり、顕著に腫瘍増殖が抑制された。特にPEG20%とPVP20%併用時に優れた抗腫瘍効果が発揮された。腹腔側臓器表面からの薬物吸収性をin vitroでの透析膜透過実験で予測可能なことをマウス肝臓表面からの薬物吸収速度との相関により明らかにした。初期放出量や腫瘍へのDOXの浸透性が抗腫瘍効果に大きく影響を与えると考えられる。添加剤の併用により、放出性や組織内濃度を制御し抗腫瘍効果の向上が期待でき、本製剤により全身循環への移行を抑制した局所的な癌化学療法を行える可能性が示された。
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