研究課題/領域番号 |
21K06514
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
中村 照也 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 准教授 (40433015)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 構造生物学 |
研究実績の概要 |
本研究は、細菌に応答して転写因子NF-kBを活性化する新規自然免疫シグナル伝達機構を原子レベルで理解し、細菌感染防御機構の基礎的知見を得ることを目的としている。本シグナル伝達経路では、細菌の代謝産物が細胞内のキナーゼを活性化し、基質タンパク質TIFAがリン酸化を受けることで、ユビキチンリガーゼ複合体が形成され、NF-kBが活性化される。一方、TIFAのホモログタンパク質であるTIFABは、TIFAと結合することで上記シグナルを抑制することが報告されているが、その分子機構は未だ不明であった。我々はゲルろ過実験によりTIFABとTIFAはヘテロ二量体(TIFA/TIFAB)を形成することを明らかにし、TIFA/TIFABのX線結晶構造を1.79 オングストローム分解能で決定した。これまでの実験により、シグナル伝達にはTIFAはホモ二量体化が必須であることを明らかにしているが、今回のTIFA/TIFABの結晶構造から、TIFABはTIFAと結合することで、TIFAのホモ二量体化を阻害してシグナル伝達を抑制することが示唆された。TIFABとTIFAのヘテロ二量体化がシグナル抑制に与える影響を調べるため、TIFA/TIFABの結晶構造をもとにTIFAとの結合能を失った変異型TIFABを調製した。HEK293T細胞を用いて、野生型および変異型TIFABがNF-kBシグナルに与える影響を調べた。その結果、野生型TIFABは細菌代謝産物によるNF-kBの活性化を抑制するのに対し、TIFAとの結合能を失った変異型TIFABはNF-kBの活性化を抑制できなかった。以上のことからTIFABはTIFAとヘテロ二量体を形成することでシグナルを抑制することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シグナル抑制分子によるNF-kb活性化の制御機構を解明できたため。
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今後の研究の推進方策 |
さらなる実験を実施すると同時にこれまでに得られた研究成果を学会で発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験プロトコールの改良や共同研究を実施でき、予定していた消耗品費を削減できたため。来年度行う実験の実施および得られた研究成果の学会発表に使用する。
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