昨年度までの研究において、アフラトキシン(AF)の標準品に紫外線を照射し、その分解挙動を検討した。その結果、AFB1およびG1は照射開始から90分で約50%程度まで減少し、それに対し、AFB2およびG2は180分照射しても顕著な減少を示さなかった。標準品は透明溶液なので、溶液全体に紫外線が照射されるのに対し、食品試料に照射する際には、その照射範囲が限定されることが予想されたため、引き続き標準溶液を用いて、紫外線照射条件を再検討した。その結果、AFG1およびB1は、照射から60分でほぼ分解された。また、AFG2およびB2の分解はゆるやかではあるが、AFG2は120分照射で50%、AFB2は120分照射で80%の残存率となった。昨年度よりもかなり分解が進行するようになり、これを最適照射条件とした。この最適照射条件を用いて、食品試料への照射を行った。試料には、実際にアフラトキシン汚染が報告されたことのあるコーンを用いて、ホモジナイズ後にAF標準品を添加し、紫外線照射試料とした。コーン中AFを紫外線照射した結果、120分照射でAFG1が約20%分解したものの、分解率は低かった。そこで24時間照射を行ったところ、最大で35%程度が分解した。このことから照射時間を延長させることで、食品中でもアフラトキシンが分解できることが分かった。また、分解挙動の変化を化学構造から検討したところ、分解の進行しやすいAFB1およびG1は末端がフラン環であるのに対し、分解しにくいAFB2およびG2は、テトラヒドロフランであり、その構造の違いが分解挙動に影響することが示唆された。 また、アフラトキシンを産生するAspergillus 属のカビに紫外線を照射し、その生育抑制を検討する目的で、まずはカビの培養を行った。その結果、アフラトキシン産生6菌株のうち、5菌株から何らかのアフラトキシンが産生された。
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