研究実績の概要 |
ヒト膵管癌由来Panc1細胞において、中心小体タンパク質であるCEP164がヘッジホッグシグナルの転写因子であるGLI2の中心小体局在を制御することで、細胞増殖を抑制することを以前に報告している。今年度は、超解像顕微鏡解析を用いた免疫蛍光染色実験によりCEP164とGLI2が中心小体において共局在することを見出した。また、HEK293T細胞の過剰発現系を用いた免疫沈降実験によりCEP164とGLI2が共沈降することが分かった。さらに、CEP164, GLI2のN末端領域、C末端領域のみを発現するコンストラクトを用いて免疫蛍光染色実験、免疫沈降実験を行った結果、GLI2はCEP164との相互作用ドメインを介して中心小体に局在することが分かった。 先に、抱水クロラールを用いた薬理学的な手法によりPanc1細胞の一次繊毛を消失させると、Panc1細胞のコロニー形成能が亢進することを報告している。今年度は、ゲノム編集技術を用いて繊毛内輸送に必要なタンパク質であるIFT88に変異を挿入したPanc1細胞を作出し、IFT88欠失Panc1細胞では一次繊毛が完全に消失すること、IFT88欠失Panc1細胞にIFT88遺伝子を導入したレスキュー細胞では一次繊毛形成が回復することを確認した。そこでこの細胞の増殖能をコロニー形成実験で調べた結果、IFT88欠失Panc1細胞の増殖が亢進することが分かった。この結果は、以前に作出したIFT80欠失Panc1細胞と同様であり、これらの結果から膵管癌細胞における一次繊毛の欠失は細胞増殖を促進することが強く示唆された。
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