研究課題/領域番号 |
21K06528
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
小林 哲夫 順天堂大学, 医学部, 准教授 (80433994)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 一次繊毛 / 膵管がん / ヘッジホッグシグナル |
研究実績の概要 |
先にヒト膵管癌由来Panc1細胞を用いた研究から、母中心小体タンパク質CEP164がヘッジホッグシグナルの転写因子GLI2の中心小体局在を制御することを見出している。 今年度は、CEP164によるGLI2制御の分子メカニズムの解明を目指した。CEP164のGLI2相互作用ドメインを探索したところ、CEP164のN末端側領域を介してGLI2と結合することがわかった。一方、CEP164はC末端側領域を介して中心小体に局在した。同様にGLI2のCEP164相互作用及び中心小体局在ドメインを探索したところ、C末端側領域を介してCEP164と結合して中心小体に局在することがわかった。これらの結果から、GLI2がCEP164との結合を介して中心小体に局在する分子メカニズムが提示された。 CEP164発現抑制によりGLI2の中心小体局在が減弱することを先に示していたが、薬理学的なヘッジホッグシグナル活性化によってもGLI2が中心小体から減弱することを見出し、この効果にはCEP164が必要であることがわかった。CEP164-GLI2相互作用を特異的に阻害する細胞を作出したところ、この細胞ではGLI2の中心小体局在が減弱するとともに、ヘッジホッグシグナルの活性化が観察された。さらに、この効果は一次繊毛を全く形成しない膵管癌細胞においても引き起こされることがわかった。 ヘッジホッグシグナルは一次繊毛を介して伝達されることが知られているが、本研究から一次繊毛を失っている膵管癌細胞においては、一次繊毛に依存しないヘッジホッグシグナル制御機構が存在することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵管癌細胞における新しいヘッジホッグシグナル伝達機構が提示できたため。
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今後の研究の推進方策 |
癌細胞における一次繊毛及びヘッジホッグシグナルの制御機構の全貌の解明を目指す。さらに、膵管癌以外の癌種や癌微小環境における一次繊毛やヘッジホッグシグナル制御についても解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度から繰り越した研究費があったため、2023年度は順調に予算を消化したにも関わらず次年度へ繰り越すこととなった。 2023年度に見出した知見を基に、膵管癌以外の癌や癌微小環境における一次繊毛やヘッジホッグシグナルの役割の解明を目指す。
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