研究課題/領域番号 |
21K06530
|
研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
狩野 裕考 東北医科薬科大学, 薬学部, 助教 (40774279)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | スフィンゴ糖脂質 / ガングリオシド / CASP4 / 多量体 |
研究実績の概要 |
今年度は、以下の研究成果を得ることができた。 (1)組み換え全長CASP4タンパク質を用いた多量体形成アッセイに基づくリガンド解析 昨年度までに、LPS合成経路欠損大腸菌を用いた組み換え全長CASP4/11タンパク質の発現系、および、内因性脂質代謝物の洗浄ステップを加えた精製系を確立した。今年度は、精製組み換えヒトCASP4(C258A)タンパク質に、各種脂肪酸構造のガングリオシドGM3を加えた際に、その活性化状態の指標となる多量体が形成されるか検討した。その結果、加えたガングリオシドGM3の脂肪酸構造の違い(鎖長、不飽和度など)によって、異なる分子量帯のオリゴマーが形成されることが分かった。GM3によって誘導されたCASP4オリゴマーの分子量と、これまでにマクロファージ細胞に対する刺激実験で得られていた生理活性に、明瞭な相関が認められた。このことから、GM3の脂肪酸構造の違いによって、そのリガンド性およびCASP4を介したサイトカイン放出が制御されている可能性を、生化学レベルで確認することができた。 (2)排除限界クロマトグラフィーを用いたより高純度な組み換え全長CASP4タンパク質精製系の確立 昨年度までに確立した精製系により、組み換えCASP4タンパク質は、ほぼ単量体として得られていた。その一方で、より高度な分析実験に進むためには、微量に含まれる単量体以外のタンパク質成分や界面活性剤成分を、より完全に除去することが必要であった。そこで、アフィニティー精製・バッファー交換に加えて、排除限界クロマトグラフィーによる単量体分子量成分の分取・精製を行った。得られた高純度単量体タンパク質を用いることで、リガンドに対する応答性や、形成される多量体の分子量帯が、これまでよりも明瞭に検出・判別できることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に確立した組み換えタンパク質発現・精製系およびアッセイ系を活用することで、目標としていたリガンド応答性の検証を生化学レベルで実施することができた。加えて、より高純度・高反応性のタンパク質を得ることが可能な精製系を確立することもできた。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、高純度な単量体タンパク質を用いることで、排除限界クロマトグラフィーを用いた多量体検出アッセイや、各種の生物物理学手法の適用が可能になると思われる。さらに、より広範囲のスフィンゴ脂質およびスフィンゴ糖脂質をリガンドとして多量体形成アッセイを行うことで、リガンドとなる脂質分子種の探索が可能である。これらを通して、親水性ヘッドグループおよびセラミド・脂肪酸構造に基づく構造特異性を、網羅的かつ多角的に明らかにすることができると考えられる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
所属研究室で保有する実験材料・機器等を有効に活用することで、当研究課題をより効率よく実施して、成果を得ることができた。次年度使用額は、次年度に予定している各種の生物物理学手法を用いた解析など、より多くの支出が見込まれる実験に有効に用いることが可能である。
|