研究課題
生体膜糖脂質ガングリオシドは、生体膜マイクロドメインを構成する成分の一つとしてシグナル伝達に深く関わっており、肥満・糖尿病時に増加し慢性炎症の誘発・増悪に関与している。本研究では、申請者らが肥満モデルマウスにおいて見出した、レプチン受容体シグナル調節における生体膜糖脂質ガングリオシドの役割を明らかにするため、ガングリオシドのレプチン受容体に対する直接的作用に加え、相互作用のプラットフォームとしてレプチン受容体の共受容体制御を介した作用について検討を行う。昨年度は、HEK293細胞を用いたレプチン受容体シグナル活性化をモニターするレポーターアッセイ系の構築を行い、阻害剤によるガングリオシド枯渇条件下におけるレプチン刺激後のSTAT3またはERK活性化の違いを見出していた。本年度は、GM3S KO細胞を用いた比較検討と並行し、レプチン受容体シグナルに負の影響を与える視床下部炎症に深く関わることが示されているミクログリアの活性化におけるGM3の役割の検討を試みた。これまでに、肥満モデルマウスにおけるGM3S KOによって、高脂肪食誘導性の視床下部炎症が抑制されることを見出しており、今回、ミクログリア細胞株であるBV-2においてCRISPR/Cas9を用いてGM3S KO細胞株を作製した。ミクログリア活性化においてはToll様受容体活性化を介した経路の重要性が明らかとされているので、各Toll様受容体のリガンド刺激により検討したところ、TLR4のリガンドであるリポ多糖とHMGB1に対する応答性がGM3S KO細胞において著明に低下していた。この結果から、TLR4活性化を介した炎症応答シグナルにおいてガングリオシドが重要な役割をもつことが示唆された。
3: やや遅れている
今年度はGM3S KO細胞を用いた比較検討を進めていたが、得られる結果の再現性などで試行錯誤した部分があり、予想より時間を要している。一方で、関連する内容として並行して行っていたミクログリア細胞株におけるKOにおいて興味深い結果が得られた。
引き続き、HEK293細胞およびBV-2細胞のGM3S KOを用いてレプチン受容体シグナル、他の共受容体の関与を検討していく。また、GM3S KOにおいてガングリオシド生合成のフローが変わり代替する糖脂質が発現することが知られているため、GM2S KO細胞も用いて合わせて検討していくことで、どういった糖脂質分子種が関与しているのか明らかにしていく。
本年度は、すでに購入していた抗体や試薬が利用できたことなどで予定より使用額が抑えられた。次年度においては、さらに必要な試薬等を購入していきながら効率よく進めていく。
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