研究課題/領域番号 |
21K06535
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
山口 真二 帝京大学, 薬学部, 教授 (60398740)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | セロトニン受容体 |
研究実績の概要 |
セロトニンは、脊椎動物と無脊椎動物の種を超えて保存されている神経伝達物質である。哺乳類では、セロトニンは本能、情動、認知機能など様々な機能に関与し、特に、社会環境からの刺激による社会行動を調節する。しかし、哺乳類の社会行動の基盤を成す神経機構についてはよく分かっておらず、自閉症スペクトラム障害などの疾患で、社会性欠如に対する治療法の合理的開発が制限されているのが現状である。鳥類ではセロトニン受容体の複数のサブタイプが存在するが、社会行動に関与するサブタイプは分かっていなかった。これまでの解析により、5-HTR1B、5-HTR1D、5-HTR1Eは、海馬の異なったサブ領域に選択的に発現することを見出した。これらの領域に注目することで、鳥の社会行動を制御する神経回路の一端が理解できると考えられた。 さらに、ニワトリ脳幹でセロトニン受容体サブタイプの発現解析を行った。哺乳類では、セロトニンは背側縫線核(DR)および正中縫線核(MR)を含む中枢神経系のセロトニン作動性ニューロンは、脳幹に空間的にクラスターとして存在し、前脳および中脳全体を上行性に神経支配する。そして、多くの精神状態の調節と中枢神経系の感情の処理に重要な役割を果たす。初年度に、ニワトリの脳幹縫線核セロトニンニューロンで、セロトニン受容体サブタイプの発現パターンが異なることを示した。このことは、ニワトリの脳幹におけるDRおよびMRのセロトニン神経の間にheterogeneityが存在することを示唆している。このような脳幹でのセロトニン作動性ニューロンのheterogeneity が中枢神経系の情報処理に重要な役割をニワトリでも果たしていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでのところ、発現解析によりセロトニン受容体サブタイプ5-HTR1B、5-HTR1D、5-HTR1Eは、海馬の異なったサブ領域に選択的に発現することを見出した。これらの領域に注目することで、鳥の社会行動を制御する神経回路の一端が理解できると考えられ、今後解析していく。また、ニワトリ縫線核に注目し、セロトニン受容体サブタイプの発現パターンが異なることを発現解析により示した。このことは、ニワトリの脳幹におけるDRおよびMRのセロトニンニューロン間のheterogeneityを示唆している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、様々な神経細胞の種類を識別するマーカーを用いた免疫染色により、セロトニン受容体を発現する神経細胞種を特定する。鳥の社会行動の調節に重要な神経回路が明らかとなる。さらに、セロトニンによる調節が、鳥の社会行動の調節に重要な役割を果たすかどうか検討する。ヒナが同種を好む社会行動「同種選好性」のアッセイ系を確立する。そして、選択的に発現するセロトニン受容体のアゴニスト、アンタゴニストを TnA に直接注入し、ヒナの同種選好性への影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため予定していた学会活動がほとんどできなかったために、旅費として計上した部分が繰り越されました。来年度に消耗品費として使う予定です。
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