研究課題/領域番号 |
21K06545
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
坂本 明彦 金沢大学, 薬学系, 博士研究員 (70740439)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 純国産弱毒生ワクチン / COVID-19ワクチン / マウス / 中和活性 / デルタ株 / メモリーT細胞 |
研究実績の概要 |
当該年度は、純国産弱毒生ワクチンをウイルスベクターとして新規のCOVID-19ワクチンを作製し、マウスに投与して血清の中和活性を解析した。そのためにシュードウイルスの中和アッセイ系を構築し、市販の米国人患者血清を用いてアッセイ系の有効性を確認した。また、当該年度に新設されたBSL3施設でSARS-CoV-2の中和アッセイ系を構築した。これらのアッセイ系でワクチン投与マウスの血清を解析したところ、中和活性の獲得に2回のワクチン投与が必要なことが分かった。また、ワクチンの投与間隔が長いほど中和活性が高くなることが分かった。これらの条件検討の結果、解析した8匹のマウスすべて(100%)で米国人患者血清と同等の中和活性を得ることに成功し、2回目のワクチン投与後少なくとも6週間は中和活性が持続することが分かった。次に、当該年度に流行したSARS-CoV-2デルタ株に対するワクチンの有効性を解析した。デルタ株を中和できたマウスは8匹のうち5匹(63%)だったが、これらのマウスは従来株と同等の中和活性を示した。最後に、サイトカインの産生能を指標にワクチンによる細胞性免疫の誘導能を解析した。CD8陽性T細胞とCD4陽性T細胞のいずれについても、1回のワクチン投与で多機能のメモリー細胞を十分に誘導できることが分かった。このように、当該年度は純国産弱毒生ワクチンをウイルスベクターとして新規のCOVID-19ワクチンを作製し、マウスでの免疫原性を明らかにした。本研究成果は学会発表で高い評価をいただき、国際誌での発表準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、新規のCOVID-19ワクチンの作製と中和活性のアッセイ系の構築を計画していた。2種のウイルスベクターワクチンを作製する計画だったが、片方のワクチンの作製に手こずっている。現在はその原因をふまえて改良型のワクチンを作製しているところで、次年度にはマウスでの免疫原性を評価したいと考えている。一方、中和活性のアッセイ系については、シュードウイルスの中和アッセイ系が当初の計画よりも早く構築できた。また、新設のBSL3施設が順調に稼働できたため、SARS-CoV-2の中和アッセイ系も当該年度に構築できた。そのため、研究全体としてはおおむね順調に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、作製が遅れているウイルスベクターワクチンを完成させ、マウスでの免疫原性を評価する。当該年度に構築した評価系を用いて、血清の中和活性と細胞性免疫の誘導能を解析する。また、当該年度に評価した純国産弱毒生ワクチンをウイルスベクターとするCOVID-19ワクチンと組み合わせることで、有効性や持続性の向上をめざす。2種ワクチンの投与順や投与間隔を検討し、6ヶ月間をめどに血清の中和活性を追跡する。
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