研究課題
2022年度は、前年度の研究成果を論文にまとめ、国際誌に発表した。前年度はデルタ株が流行したが、当該年度はオミクロンBA.1株が流行した。そこでBA.1株に対応するシュードウイルスを作製し、本研究で開発したワクチンの有効性を検討した。ワクチン投与マウスの血清を用いて中和活性を調べたが、BA.1株のシュードウイルスを中和できたマウスは8匹のうち2匹(25%)で、従来株やデルタ株ほどの中和活性を示さなかった。そこで、プロモーターと遺伝子組換え部位を改良したワクチンを作製し、免疫原性が高まるかを検討した。その結果、血清の中和活性と主要なエピトープに対するT細胞免疫をどちらも3-5倍ずつ高めることに成功した。本研究成果は国際学会で口頭発表する機会をいただき、現在、国際誌での発表準備を進めている。また、改良したプロモーターと遺伝子組換え部位を用いて、BA.1株対応型のワクチンを作製した。このワクチンをマウスに投与した結果、検討した3匹すべてのマウスでBA.1株のシュードウイルスと患者から単離したBA.1株の中和活性を確認できた。本研究では、2種類のウイルスベクターワクチンを作製し、組み合わせて用いることで有効性を高める計画だった。片方のワクチンの作製が難航したが、ワクチンの設計を見直すことで解決し、当該のワクチンを完成させることができた。そこでマウスでの免疫原性を評価した結果、新型コロナウイルスのSタンパク質に対する抗体と主要なエピトープに対するT細胞免疫を誘導できることが確認できた。そのため、このワクチンと今年度論文発表したウイルスベクターワクチンを1回ずつマウスに投与し、有効性や持続性が高まるかを検討しているところである。
2: おおむね順調に進展している
2022年度は、国際誌での研究成果の発表が目標で、達成することができた。また、作製が難航したウイルスベクターワクチンが完成し、前年度の計画どおりマウスでの免疫原性を明らかにした。一方、すでに完成していたワクチンがオミクロンBA.1株に対して期待ほどの効果を示さないことがわかった。そのため、ワクチンの改良という新たな課題が生まれたが、研究全体としてはおおむね順調に進展しているものと考える。
次年度は、改良型ワクチンの研究成果を論文にまとめ、国際誌での採択をめざす。また、2022年度に完成したウイルスベクターワクチンとすでに論文発表した別のウイルスベクターワクチンを組み合わせることで、有効性や6ヶ月間をめどに持続性の違いを検討する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 5件) 備考 (1件)
Parasitology International
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https://www.p.kanazawa-u.ac.jp/~vaccine/research2.html