研究課題/領域番号 |
21K06550
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
根岸 文子 帝京大学, 薬学部, 准教授 (40177902)
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研究分担者 |
大藏 直樹 帝京大学, 薬学部, 准教授 (60349256)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | シアリダーゼNEU1 / シアリダーゼ阻害剤 / 3T3-L1白色脂肪細胞 / 脂肪分解調節 / 炎症性アディポサイトカイン |
研究実績の概要 |
シアル酸誘導体は、水溶性部分と脂溶性部分のバランスが良く多彩な生理活性を持つため、医薬品の新素材として期待されている。2021年度は、シアリダーゼ阻害活性を持つシアル酸誘導体である“DANA“と“NANA“ が白色脂肪細胞の脂肪分解を促進するかを、βアドレナリン刺激を行った場合の培地中グリセロール濃度の変動により調べた。具体的には、これらの阻害剤の処理の時期及び濃度について検討した。2022年度は、これらの阻害剤に加え、NEU1に特異的な阻害活性を持つC9-BA-DANAについて解析を行った。その結果、C9-BA-DANAで処理した場合にも培地中のグリセロール濃度が上昇し、DANAより強い促進活性をもつことが明らかとなり、NEU1による白色脂肪細胞の脂肪分解にNEU1のシアリダーゼ活性が重要である事が示唆された。さらに、2022年度は、肝細胞の脂肪滴におけるNEU1の関与を検討する実験条件を確立し、NEU1が肝細胞の脂肪滴退縮を促進することを明らかにした。また、白色脂肪細胞は、エネルギーの貯蔵庫として働くと同時に、様々なアディポサイトカインを分泌して、全身の機能を調節する内分泌器官である。これまでの研究から、NEU1の発現を低下させると、炎症性アディポサイトカインIL-6、MCP-1の分泌が抑制されることを明らかにしてきた。そこで、2023年度は、炎症性アディポサイトカインと抗炎症性アディポサイトカインの分泌におけるNEU1のシアリダーゼ活性の関与を、DANA とC9-BA-DANAについて検討した。その結果、DANAとC9-BA-DANA阻は、抗炎症性アディポサイトカインの分泌には影響しないが、炎症性アディポサイトカインの分泌を低下させることを明らかにし、脂肪分解のみならず、炎症性アディポサイトカイン分泌におけるNEU1シアリダーゼ活性の重要性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
次年度は、本年度の研究において確定した実験条件を用い、白色脂肪細胞について、シアリダーゼ阻害活性を持つシアル酸誘導体を用いて、脂肪分解と炎症性アディポサイトカイン分泌の調節におけるNEU1のシアリダーゼ活性の生理的意義について、実験計画を遂行できると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究において確定した実験条件を用い、シアリダーゼ阻害活性を持つシアル酸誘導体“DANA“と“NANA“、特にNEU1の活性を特異的に阻害するC9-BA-DANAについて、白色脂肪細胞の脂肪分解促進と炎症性アディポサイトカイン分泌抑制に関して明確な結果を示す。明確な結果がえられた場合には、① マウスペリリピン1のタグ付き発現ベクターが入手出来たので、マウス3T3-L1脂肪細胞に導入し、ペリリピン1の脱シアリル化部位を質量分析にて同定し、ペリリピン1による脂肪分解に重要なリン酸化との関係を調べる ② 炎症性アディポサイトカイン分泌調節のどの過程にNEU1のシアリダーゼ活性化が関与するかを調べる。これらの方策により、NEU1による白色脂肪細胞の機能調節の生理的意義を解明する。また、抗肥満作用が報告されている天然物由来化合物についても同様の実験を行い、NEU1活性阻害との関連を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行に想定以上に時間を要し、研究計画の見直しも行ったため。
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