研究課題/領域番号 |
21K06551
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
津山 崇 東邦大学, 薬学部, 講師 (70436096)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | RecQ / RecQ4 / DNA修復 / DNA二本鎖切断 / 非相同末端結合 / 相同組換え |
研究実績の概要 |
本研究は、DNA二本鎖切断(double-strand break: DSB)修復機構およびDSB修復経路選択機構の一端を分子レベルから解明するため、DSB修復に関与するRecQ4の機能解析をおこなっている。研究代表者はこれまでにRecQ4のN末側領域の断片(以後 RecQ4-N)がDSB修復経路である非相同末端結合(NHEJ)を阻害する一方、相同組換え(HR)を促進することを示唆する結果を得ている。現在、このRecQ4-Nの作用メカニズムの解明に向けて解析を進めている。NHEJで機能するKu70のRecQ4-Nとの結合領域を調べたところ、C末側領域で結合することが明らかとなった。そこで、さらに結合領域を絞るため、Ku70のC末側領域に含まれる3つの機能ドメインの各欠失変異体タンパク質を作製している。また、HRの初期段階で機能するMRE11やCtIPなどのヌクレアーゼとRecQ4との結合について調べるため、各組換えタンパク質を作製しており、MRE11の組換えタンパク質の作製およびCtIPの大腸菌での発現用プラスミドの作製が完了した。さらに、ヒト培養細胞を用いてRecQ4-Nの作用について調べるため、ドキシサイクリンの添加により発現誘導可能なRecQ4-N発現誘導細胞株を樹立した。この細胞株にRecQ4-Nを発現させたところ、細胞増殖能の低下、細胞周期G1期での蓄積、DSB誘発剤であるカンプトテシンに対する感受性の低下が観察された。これらのことから、RecQ4のN末側領域以外の中央ヘリカーゼ領域やC末側領域もDNA複製においてなんらかの機能を果たしていることが示唆された。一方、RecQ4のN末側領域以外の領域の機能についても調べるため、N末側領域を欠失したRecQ4の発現誘導細胞株の樹立をおこなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、DSB修復におけるRecQ4の機能について解明してくいくことを目的とし、生化学的解析と培養細胞を用いた解析を密接に組み合わせながら研究を伸展させていくことを計画している。現在のところ、生化学的解析については必要となる組換えタンパク質の作製を主におこなっているが、組換えタンパク質を用いたタンパク質間の物理的・機能的相互作用の解析までは至っていない。培養細胞を用いた解析についてはRecQ4-N発現誘導株の樹立が完了し、現在はその表現型についての解析を主におこなっている。
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今後の研究の推進方策 |
NHEJやHRで機能するタンパク質とRecQ4-Nとの機能的相互作用について、作製した組換えタンパク質を用いて解析する。具体的には、RecQ4-Nから様々な領域を欠失させた変異体について、Ku70との結合活性とNHEJ阻害活性を調べ、Ku70との結合がNHEJの阻害に必要か明らかとする。また、MRE11やCtIPのヌクレアーゼ活性に対するRecQ4-Nおよびその各欠失変異体の影響について調べ、HRの初期段階にRecQ4-Nが影響を与えるか明らかとする。さらに、RecQ4-Nを発現誘導可能な細胞株を用いて、RecQ4-Nの発現時における各種DNA傷害剤に対する感受性の変化や、DSB修復関連タンパク質のDSB部位への局在の変化について調べ、RecQ4-Nが生細胞中でNHEJやHRにどのような影響を与えるか明らかとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
未使用額が発生した理由:研究人員に不足が生じたため、組換えタンパク質を用いた解析をおこなうことができなかった。 次年度における未使用額の使用計画:このため、タンパク質間相互作用における、結合領域の特定や、DNA結合活性や酵素活性への影響についての解析を次年度におこなうこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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