研究課題/領域番号 |
21K06554
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
中川 公恵 神戸学院大学, 薬学部, 教授 (90309435)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ビタミンK / UBIAD1 / MK-4 / ノックアウトマウス / 心血管 / 脳神経 |
研究実績の概要 |
ヒトが主として摂取するビタミンKは植物由来のビタミンK1(フィロキノン, PK)であるが、生体組織にはビタミンK2(メナキノン-4, MK-4)が最も多い。これは、PKが生体内でUbiA prenyltransferase domain containing 1(UBIAD1)という酵素によりMK-4に変換されるためであり、申請者はこのメカニズムを解明してきた。また、UBIAD1全身欠損マウスを作出し、胎生早期に致死となることから、UBIAD1が個体発生に必須の機能を担うことも明らかにしている。UBIAD1は全身のあらゆる組織に発現しているが、各組織でUBIAD1がMK-4を変換生成する生理的意義は明らかではない。本研究では、時間空間特異的にUBIAD1を欠損させことができるコンディショナルノックアウトマウスを用いて、MK-4とUBIAD1が担う新規生理機能の解明を進めている。本年度は、心血管特異的UBIAD1欠損マウスの表現型解析を行い、UBIAD1が心臓の細胞機能不全を引き起こすことを見出した。また、心筋細胞の初代培養にも成功し、心筋細胞レベルでの異常も見出している。また、脳神経特異的UBIAD1欠損マウスでは、UBIAD1欠損の誘発から成長の時期に応じて脳内での遺伝子発現状況が変化することや、小脳の機能異常が生じることを見出している。さらに、初代培養神経細胞の培養にも成功し、細胞機能の変化の解析も進めている。これに加え、ビタミンK依存的に脳内で発言が誘導される新規ビタミンK応答遺伝子を数種類発見することにも成功している。現在これらの遺伝子については、その発現制御機構の解析を試みている。 現在は、Tamoxifen誘導型UBAID1欠損マウスを用いて、骨芽細胞や軟骨細胞の初代培養系を立ち上げ、骨におけるUBIAD1の機能解析を細胞レベルでの解析から進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿って研究が進められており、組織特異的UBIAD1遺伝子欠損マウスの作出から初代培養系の確立、解析が行えている。特に、心血管、脳神経、骨に関してのUBIAD1欠損の影響を進めており、心血管および脳神経に関しては、個体レベルの解析と細胞レベルでの解析の両方を行うことができている。骨についても骨芽細胞および軟骨細胞の初代培養を行い、細胞レベルでの解析を進めている。研究内容は概ね申請内容に沿って進めることができている状況である。なお、新たなcreマウスの購入については、骨の分野の研究結果を見て判断する必要があるため、2022年度に購入手続きを行うこととしている。
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今後の研究の推進方策 |
脳神経特異的UBIAD1欠損マウス、心筋細胞及び血管平滑筋細胞特異的UBIAD1欠損マウス、Tamoxifen投与依存的に全身でUBIAD1欠損を惹起できるマウスを用い、引き続き、出生後から成熟過程を通してた時期特異的なUBIAD1の機能、MK-4の役割を解析する。特に、Tamoxifen投与依存的UBIAD1欠損マウスからは、骨芽細胞・破骨細胞・軟骨細胞を個別に初代培養し、骨代謝を制御する種々の細胞単独および細胞間相互影響の解析を行う。これにより得られた結果から、骨芽細胞や軟骨細胞特異的cre発現マウスを用いて、骨芽細胞および軟骨細胞特異的UBIAD1欠損マウスを作出し、細胞特異的なUBIAD1欠損による影響の解析を展開していく。 また、各組織における遺伝子発現の変化をRNAseq解析により網羅的に評価し、UBIAD1およびMK-4のターゲットとなる機能制御因子を探索同定する。この解析では、各組織特異的UBIAD1欠損マウスに共通して発現変動する因子を見出し、UBIAD1が担う細胞機能の解明を目指す。遺伝子発現解析より見出した因子については、免疫組織染色及びWestern blot解析によりタンパク質レベルでの発現状況も解析する。 細胞レベルでの解析も初代培養系を駆使して引き続き行い、UBIAD1欠損による細胞機能変化を解析するとともに、MK-4供給やUBIAD1発現ベクター、UBIAD1変異体発現ベクターの遺伝子導入を実施し、MK-4により制御される機能の解析とUBIAD1が担うMK-4合成以外の機能探索を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の試薬の納期遅れにより、当該年度中に購入できない状況となってしまったため、次年度使用額が生じた。 購入予定であった試薬は次年度に納品されることとなっており、当該助成金はその支払いに充てる予定である。なお、翌年度の助成金については、当該研究の遂行に必要な試薬などの購入に充てる予定である。
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