研究実績の概要 |
ヒトが主として摂取するビタミンKは植物由来のビタミンK1(フィロキノン, PK)であるが、生体組織にはビタミンK2(メナキノン-4, MK-4)が最も多い。これは、 PKが生体内でUbiA prenyltransferase domain containing 1(UBIAD1)という酵素によりMK-4に変換されるためであり、申請者はこのメカニズムを解明してきた。 UBIAD1全身欠損マウスは、胎生早期に致死となることから、UBIAD1が個体発生に必須の機能を担うことが明らかとなっている。UBIAD1は全身のあらゆる組織に発 現しているが、各組織でUBIAD1がMK-4を変換生成する生理的意義は明らかではない。本研究では、時間空間特異的にUBIAD1を欠損させことができるコンディショ ナルノックアウトマウスを用いて、MK-4とUBIAD1が担う新規生理機能の解明を進めている。組織特異的欠損として、心血管特異的UBIAD1欠損マウスを作出し、表現型解析を行った。その結果、UBIAD1が心臓の細胞機能不全を引き起こすことを見出すとともに、心臓の機能異常が起こるメカニズムについて、種々の遺伝子発現変化が生じていることを明らかにした。また、 出生成熟後にUBIAD1欠損を誘導したマウスにおいて、脂肪組織量の減少と組織構造異常が生じることを見出し、脂肪組織にもUBIAD1欠損の影響があることを見出 した。さらに、幼若期でのUBIAD1欠損の誘導により、骨形成能が著しく低下し、骨形成不全になることも明らかにした。UBIAD1欠損による骨形成への影響について詳細に解析した結果、軟骨細胞の増殖及び分化がUBIAD1欠損により低下することを見出した。臨床ではビタミンKは変形性関節症の予防に有効と言われており、本研究はビタミンK及びUBAID1が軟骨細胞機能に重要であることが示すものである。
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