研究課題/領域番号 |
21K06555
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
山下 沢 武庫川女子大学, 薬学部, 准教授 (70398246)
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研究分担者 |
竹下 浩平 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, 研究員 (80346808)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 結核菌 / X線結晶構造解析 / ドッキングシミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究では海洋海綿より抽出された低分子化合物Agelasine D(Age-D)およびHalicyclamine A(Hali-A)の抗結核作用に着目し、これら化合物のターゲット分子としてそれぞれ同定されたBCG3185cとBCG2664について、相互作用解析を中心とした原子レベルでの機能解析を行うことで、創薬研究を指向した作用機序に関する研究基盤を構築する。 本年度は、得られているBCG3185cの結晶にAge-Dを浸漬し、Age-DがBCG315cに結合した構造のX線結晶構造解析による取得を試みた。BCG3185cの結晶が存在する溶液に、DMSOで溶解したAge-Dを様々な濃度になるように添加し、数時間もしくは一晩静置したのちに結晶を回収しX線結晶構造解析を実施した。X線回折実験は分担者によってSPring-8, BL32XUもしくはBL26B2ビームラインにて行った。回折データの取得には成功し、結晶構造解析を行ったものの、BCG3185cの基質結合ポケットにAge-Dと思われる電子密度を確認することはできなかった。 一方、BCG2664については大量発現系の構築を実施した。バキュロウイルス-昆虫細胞発現系を用い、低レベルでも発現の有無を確認するためにN末端もしくはC末端にGFPを融合したBCG2664の発現系を構築した。その結果、両者ともGFP蛍光を発していることが確認され、結果的に、BCG2664を昆虫細胞によってリコンビナント蛋白質として発現させることに成功した。さらにBCG2664は膜タンパク質であるため、単離精製するためには界面活性剤で可溶化させることが必須である。そこで、数種類の界面活性剤(DDM, DM, OGなど)で可溶化試験を行ったところ、DDMにコレステロール誘導体を加えたもので効率よく可溶化させることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BCG3185cについては、Age-Dとの複合体の結晶化条件の検討段階に至っており、まだ結晶の獲得には至っていないものの、条件検討を行えるだけのタンパク質は確保できており、さらに条件を検討することで獲得を目指せている。また、獲得できない場合でも、現時点で得られている構造を基に、コンピュータを用いたドッキングシミュレーションによって、候補となる化合物の探索や薬物の設計は継続して行うことができるため、その進捗は順調と考えている。一方、BCG2664についても、昨年度、昆虫細胞を用いた培養系の確立、および可溶化条件に必要な界面活性剤の同定には成功しており、概ね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、BCG3185cについてはAge-Dとの複合体を結晶化スクリーニングするなどの手法を引き続き検討する一方で、BCG3185cの結晶構造解析結果とシュレーディンガー社のドッキングシミュレーションソフトを用いた計算科学やAplfafold2などの構造予測を行い、妥当な複合体構造情報を取得するなども視野に研究を進めていく。 また、BCG2664については、可溶化条件のさらなる検討と、さらなる発現量の増加や構造解析を可能する収量での高純度精製の条件検討を進め、未だ明らかとなっていない構造の解析を目指す。また、同時に各種変異体を調製し、Hali-Aとの結合性の変化も検証していくことで、構造解析後の研究展開への足がかりとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、BCG3185cおよびBCG2664に関し、結合性実験を行うことを目的としていたものの、それぞれ複合体および単体での構造解析にまずは力を注いで研究を遂行しているため、最も消耗品として費用を計上していたmonolithでの研究に至っておらず、その経費を次年度に繰り越したため、昨年度の残額をそのまま次年度の使用額に上乗せしている。実施内容には変更がなく、実施時期に若干のずれが生じたためであり、計画全体を見た場合に、実施内容には何ら変更はない。
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