研究課題
本研究課題では、現在でも年間に約2万人の結核菌の感染者が報告される要因の一つとされている薬剤耐性結核菌に対し、新規作用機序を有する化合物の候補となりうる2つの低分子、Agelasine D(Age-D)およびHalicyclamine A(Hali-A)について、それぞれの標的タンパク質であるBCG3185cおよびBCG2664の構造基盤に基づいた相互作用解析など、原子レベルでの機能解析を行い、創薬研究を指向した研究基盤の構築を試みた。BCG3185cについては、発現精製条件の精密化を行い、結晶化に必要な条件でのタンパク質の獲得に成功した。さらに、BCG3185c単独について、X 線結晶構造解析により、1.8オングストロームの分解能での原子構造解析に成功した。一方、Age-Dとの結合様式を調べるため、BCG3185c単独の結晶にAge-Dをソーキングする方法、およびBCG3185cとAge-Dを混合して共結晶化する方法の2種類での複合体の結晶化を試みた。しかしながら、いずれの方法においても複合体の構造を得ることは困難であった。そこで、高分解能のBCG3185c単独の結晶構造に対し、Age-Dの構造を用いてドッキングシミュレーションを行うこととし、得られた結果から、Age-Dの結合様式を推定することができ、論文として発表した(Takeshita ,et al., 2024)。一方、BCG2664については、AlphaFold2による構造予測を基に、N末端およびC末端それぞれにGFPをスプリットさせて、タンパク質が細胞内で再構成される新たな手法を利用して構造解析を試みるなど、様々な方法を検討したものの、リコンビナントタンパク質の発現および精製条件などの確立が難しく、構造解析を行うに足るサンプルの収量は充分に確保できなかった。
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BioRxiv
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10.1101/2024.05.14.591795