本研究では、家族性パーキンソン病(PD)原因遺伝子leucine-rich repeat kinase 2(LRRK2)の活性化機構とその病的意義および神経変性メカニズムの解明を行った。LRRK2を活性化することが知られているRab29について、生化学的性状解析を行い、培養細胞や動物組織を生化学的に分画するとRab29は他のRabと異なり膜画分に存在することを見出した。Triton X-114を用いた相分離によりRab29の疎水性を検討し、他のRabと同様に疎水性を有することを確認した。これらの結果から、Rab29は他のRabと同様にゲラニルゲラニル化という脂質修飾を受けるが、GDP解離阻害因子(GDI)による膜からの引き抜きを受けない特異な性質を有することが示された(J. Biol. Chem.誌に発表)。 また、LRRK2の活性化により生じる細胞内現象について解析を行い、培養細胞に家族性変異型LRRK2を過剰発現すると、リソソームが核近傍に集積することを見出した。CRISPR-Cas9法によりLRRK2基質タンパク質をノックアウト(KO)したところ、Rab12のKOによりリソソームの集積が消失した。Rab12 KO細胞に野生型Rab12を再発現することでリソソーム集積が回復したが、LRRK2によるリン酸化部位を置換したS106A変異型Rab12では回復しなかった。これらの結果から、Rab12の過剰リン酸化によりリソソーム局在が異常になる可能性が示唆された(FASEB J.誌に発表)。 さらに、Rab29と共に機能するタンパク質を同定するために、TurboID法を用いたRab29近傍タンパク質の探索を行った。主に小胞体やゴルジ体に局在するタンパク質が同定され、Rab29が分泌経路において機能する可能性が示唆された。今後、Rab29の生理的・病的機能を解明していきたい。
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