研究課題/領域番号 |
21K06560
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
樋野 展正 大阪大学, 薬学研究科, 講師 (90469916)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | がんゲノム / タンパク質立体構造 / タンパク質間相互作用 / クロスリンク / 人工アミノ酸 / KEAP1 |
研究実績の概要 |
がんゲノム変異の90%以上は機能未知の低頻度変異が占めている。しかし、これらの変異とがんとの関連を明らかにする戦略は確立されておらず、新たな治療標的の探索は進んでいない。本研究では、タンパク質の立体構造上においてがん変異が集中的に見つかる領域に着目し、その領域で生じるタンパク質間相互作用を独自の細胞内光クロスリンク法を用いて特異的に同定することで、がん変異により異常をきたす相互作用を効率良く発見することを目指す。また、がん変異がこれらのタンパク質間相互作用に及ぼす影響、がん細胞の増殖に及ぼすを迅速に評価しすることで、がん増殖に有利に働く変異を効率よく同定する戦略の確立を目指す。 これまでに、肺がんの30%に変異が認められるがん抑制因子KEAP1に着目し、その立体構造中に変異が集積する領域を見出した。さらに、その領域に結合する新規相互作用因としてRab8を同定し、両者の相互作用がKEAP1のがん変異によって顕著に抑制されることを示した。本年度は、KEAP1とRab8aの機能的関連について検討を進めた。KEAP1が正常レベルで発現する肺がん由来細胞株NCI-H23を用いた検討では、siRNAによるKEAP1の発現抑制によってその増殖能が大きく亢進した。さらに、Rab8aの発現を同時に抑制した場合には、細胞の増殖亢進がほぼキャンセルされることが明らかとなった。この結果は、KEAP1の機能抑制によるがん増殖の亢進に、Rab8aが必須の役割を果たすことを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画通り、KEAP1とRab8a間の機能的関連について検討を進めた。KEAP1とRab8aの既知の機能から、これらの因子の発現抑制が細胞の遊走能に影響を与える可能性を考えたが、予想に反して、細胞の増殖能に顕著な影響が見られた。今後は細胞増殖への影響を指標に、動物モデルを用いた検討を行う。現在、野生型KEAP1、変異型KEAP1、Rab8aのそれぞれを安定的に発現する細胞株の樹立を進めており、これをマウスに移植することで、KEAP1の低頻度変異とがん増殖との関連を明らかにする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、野生型KEAP1、変異型KEAP1、Rab8aのそれぞれを安定的に発現する細胞株の樹立を進めており、これをマウスに移植することで、KEAP1の低頻度変異とがん増殖との関連を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費に端数が生じたため112円を次年度使用額として繰り越した。翌年度分の助成金と合わせて適正に使用する。
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