研究実績の概要 |
研究代表者らは、がん細胞膜上の分子同士が特異的に会合体を形成する現象について以前より研究を進め、2つの細胞膜上分子の組み合わせで定義される新しいタイプのがん抗原「2分子会合体がん抗原」の同定および抗体医薬開発・がん診断への応用について報告してきた。 最近、数種の培養がん細胞を使用した2分子会合体がん抗原解析で、いくつかのがん種間で共通の会合体がん抗原候補が検出されるという興味深い事象が観察された。ここで観察された事象は、会合体がん抗原に特有の事象である可能性もあり、より詳細な研究が必要であると考えた。本研究では、少なくとも2-3種のがん種間で細胞膜上の有用な「2分子会合体共通がん抗原」の同定および有用性の検証を目指す。 2023年度は、2022年度と同じくヒトがん培養細胞であるA549, MDA231, T98, HeLaS3, Panc1について検討した。2021,22年度はEGFRの抗体を使用していたが、2023年度に一部のデータが他の研究者よりNature Communicationに掲載されたため、2022年度にも使用した免疫チェックポイントで注目されているPD-L1分子の抗体を中心に検討を行った。 上記5種類の細胞上で共通するPD-L1分子会合体をproximity labelingで標識・精製してPD-L1分子に関連する「2分子会合体共通がん抗原」について電気泳動で確認した。 また、昨年までの一連の研究の過程で、偶然にがん細胞から分泌される「細胞外小胞」が、がん細胞自身に結合する現象を見出した。共通がん抗原を認識して結合している可能性もあり、proximity labelingを用いてEV結合に関与する分子会合体について標識し、電気泳動にて確認した。
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