研究課題/領域番号 |
21K06569
|
研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
葛原 隆 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (00260513)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | インフルエンザウイルス / RNAポリメラーゼ / PA / エンドヌクレアーゼ / アセチル化 / ヒストンアセチル化酵素 / PCAF / GCN5 |
研究実績の概要 |
インフルエンザは現在でも重要な感染症であり、保存性が高く変異が起こりにくいインフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼは新規の抗インフルエンザ創薬の非常に良い標的と考えられる。このRNAポリメラーゼは 3種のサブユニットPA, PB1, PB2で構成され、そのうちPAはエンドヌクレアーゼ活性により宿主mRNAから5’-capを含む十数塩基を切り取り、プライマーとして利用することでウイルスのmRNAが合成される。私どもの研究グループは、大腸菌により発現・精製したPAの組換えタンパク質がヒトのアセチル化酵素PCAFとGCN5によってアセチル化され、PAのエンドヌクレアーゼ活性が制御されることを報告した。質量分析によりPAの19番目のリジン残基(K19)がアセチル化標的であることを示唆し、K19をグルタミン(K19Q)と アルギニン(K19R)に変異させたところアセチル化レベルが減少した。興味深いことに、アセチル化リジンを模倣するK19Q変異によりエンドヌクレアーゼ活性が制御され、K19アセチル化の重要性が示唆された。去年までに、さらに質量分析の結果を再検討したところ、新たにK104とK158もアセチル化修飾部位であることを見出した。そこで、本報告では、K104とK158を単独でグルタミンまたはアルギニンに変異させた組換えタンパク質、およびK19・K104・K158の2か所以上のリジンを組み合わせてアルギニンに変異させた組換えタンパク質を作成した。そして、そのうちK104RおよびK104Qの変異を有する組換えタンパク質を用いて、アセチル化レベルの変化を解析した。その結果、どちらの組換えタンパク質もアセチル化レベルの減弱が観察され、K104もアセチル化の標的であることを生化学的に明らかにした。本年は、K19とそれらの変異を組み合わせた各種の複合変異組換えPAタンパク質の作成を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はインフルエンザAウイルスのRNA依存RNAポリメラーゼのPAサブユニットにおいて、K19だけでなく、K104・K158という複数箇所の新規アセチル化部位の複合的な変異を有するPAタンパク質を作成しつつあるため。
|
今後の研究の推進方策 |
インフルエンザPAエンドヌクレアーゼ中に、新たにアセチル化部位として見出したK104とK158を単独でグルタミンまたはアルギニンに変異させた組換えタンパク質、およびK19・K104・K158の2か所以上の複数のリジンを組み合わせてグルタミンまたはアルギニンに変異させた組換えタンパク質を大腸菌を用いて発現、精製し、アセチル化の解析、さらにそのエンドヌクレアーゼなどの機能に対する解析を行う。アセチル化レベルとエンドヌクレアーゼ活性の変化、ウイルスへの効果を解析していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスによる影響が過去数年にわたり研究活動に良くない影響を及ぼしたことと、この影響は本年度の春先まで残っており、学生を含めた研究活動が阻害されていたため。
|