研究課題
前年度の研究において,骨肉腫細胞NCTC細胞を大腿骨に移植した骨がん性疼痛モデルマウスを作製し,Nr4a1拮抗薬(以下NRA化合物)の効果を検討したところ,がん細胞移植足の機械的アロディニアを有意に抑制し,骨腫瘍の増大が抑制されたことからNRA化合物は鎮痛作用と抗癌作用を併せ持つ化合物となることが示唆された。しかしながら,その効果は限定的(完全に抑制されたわけではない)であったため,本年度はさらなるNRA誘導体化合物の開発とその評価研究に取り組んだ。NRA化合物をリード化合物として,様々な置換基を導入した新規NRA化合物(以下new-NRA化合物)を26種類合成した。26種類のnew-NRA化合物のうち,オリジナルのNRA化合物のNr4a1阻害作用を上回った化合物は19個であった。ドッキングシミュレーションを用いた構造活性相関から,活性の見られなかった7個の化合物は,置換基を導入した部位がNr4a1との結合に必須の部位であることが分かり,結合に必須の構造を置換してしまったため活性が失われたことが明らかとなった。次に活性の増強が認められた19個の化合物についてすい臓がん細胞(Panc1細胞)を用いた抗がん作用に関する検討を行った。その結果,がん細胞の増殖,生存抑制,および遊走抑制作用のすべてにおいてリード化合物を上回る成績が得られた。またこれらの抗癌作用は,Nr4a1阻害活性と正の相関関係があることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
誘導体化合物の合成を予定通り進め,構造活性相関が明らかとなり,また元の化合物よりも活性の強い化合物の獲得に成功したため。
現在,最も強力なNr4a1阻害作用のあった化合物に関して,骨がん性疼痛モデル等の動物モデルを用いた検討を行っている。今後は,化合物の体内動態や,毒性・安全性を総合的に評価するとともに,抗がん作用メカニズム,鎮痛作用メカニズムを明らかにしていく予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件)
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