初年度の研究において,ドッキングベースのin silicoスクリーニングにより,新規Nr4a1低分子拮抗薬(化合物A)の獲得に成功し,化合物Aが骨癌性疼痛モデルマウス(大腿骨への肉腫細胞の移植による)において鎮痛作用と抗腫瘍作用の両方を持つことを明らかにした。一方で,その効果は限定的であったことから,2年目の研究においては化合物Aをもとに置換基の導入等の誘導体化合物の合成展開と,Nr4a1阻害活性を検討し,化合物Aの効果を上回る新規Nr4a1低分子拮抗薬(化合物A’)の獲得に成功した。 本年度は,化合物A’の鎮痛作用および抗癌作用についての研究を進めた。初年度と同様,マウス骨肉腫NCTC2472細胞をC3Hマウスの大腿骨に移植して誘発される骨破壊性疼痛モデルマウスを用い,化合物A’の効果を検討したところ,マウス後肢の触刺激によって誘発される過敏反応(機械的アロディニア)を用量依存的に有意に抑制し,骨腫瘍の増大(Luc導入NCTC2472細胞をin vivoイメージングにより検出)も抑制された。これらの効果は元化合物Aを上回る効果であり,より強力なNr4a1低分子拮抗薬の開発に成功したと考えられた。 一方で,化合物A’のin vitro ADMET試験をBINDSに委託して検討したところ,Caco-2細胞膜透過性,PBS溶解性,肝ミクロソーム安定性,タンパク結合性,CYP阻害等の評価において,ほとんどすべての評価項目において,医薬品としての物性が低く,Undruggableな物性を有する化合物であることが判明した。そこで現在,①Druggableな物性を有する化合物A’からの誘導体化合物の合成,②化合物A’の低物性を回避するためのドラッグデリバリーシステムの開発を目指した研究を引き続き行っている。
|