これまでに抗体ファージライブラリーより複数の大腸癌Te-EVsに対するモノクローナル抗体を作成している。得られた抗癌EV抗体が正常大腸組織Te-EVsには反応せずに、大腸癌Te-EVsにのみ反応することが確認できている。さらに、抗癌EV抗体の抗原タンパク質Xを明らかにすることが出来ている。本期間はタンパクX陽性癌EVが癌患者血液検体にて検出可能か否かを検証した。EVマーカーCD9に対する抗体とタンパクXに対する抗体によるサンドイッチELISAの結果、大腸癌、卵巣癌患者血液検体での検出に成功し、健康人血液と比べて高値を示すことを明らかにした。また、フローサイトメーターを用いたシングルEV解析を行い、タンパクX陽性癌EVが健康人と比べて大腸癌、卵巣癌患者血液で高値を示すことを明らかにした。さらに術前・術後癌患者血液検体を用いた解析においては、タンパクX陽性癌EVが術前と比べて術後で顕著に低下することを見出した。本研究によって、抗癌EV抗体がNK細胞の細胞傷害活性抑制作用を阻害できることを明らかにした。さらに抗癌EV抗体の抗原タンパク質Xを見出し、癌診断マーカーとしての可能性を見出した。今後は、タンパクX陽性癌EVがどのように癌促進性作用を有しているのかを明らかにしていきたい。また、簡便な検査薬の開発に向けて、タンパクX陽性癌EVを検出するのに適したEV膜タンパク質の同定を行なっていきたい。
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